元マネって言うのは、若かりしころは相当のやり手で、相手がどんな役職者だろうと納得できないことは頑として受け付けないほどのタフな人だったらしい。
いまだに彼の名前を出すと、本部の人の態度が一変するくらいだ。
そんな彼もここ数年、奥さんがガンで倒れ、その看病のために役職を失ったり、家庭中心の生活(もともと愛妻家なので、家庭は大事にしていたけれどそれにも増して)を送るようになって、ずいぶんとまるくなったように思う。
年齢もあるのかもしれないけれど、かなり穏やかになったな、と思う。
それはそれで、寂しいような気もする今日この頃だったりもするのだけれど。
そんな彼が、
「是非聴いてみて。貸してあげるから」
と貸してくれたのが、「きみまろスーパーライブ」のCD。
ドライブの最中に、笑いながら聴いているらしい。
毒を含んだ下ネタで、大笑いする観客の様子。
倦怠期すら過ぎた夫婦をネタにしたトークはなかなか面白かった。
でも、これを聴く元マネの心情を思うと、少し切なくなるのだ。
ガンと戦ってきたこの数年、奥さんとの日々は、いつなくしてしまうか知れない、と心のどこかで覚悟している。
「笑うことで免疫力が上がるんですよ。笑わない人はダメです」
奥さんの望みをできる限り叶えるべく、自分は興味のない韓国旅行に同行したり、奥さんが欲しいと言うブーツを探したり、傍で見ていてその姿は心温まると同時に切なくなる。
きみまろのCDに込められた奥さんへの愛情が伝わってきて、ちょっとしんみりとした秋の夜だった。
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