僕らはリポビタンDに「タウリン」が入っていることを知っている。しかもその量が1000ミリグラムだということも知っている。ただ、タウリンが僕らにどんなにいいことをしてくれるのかは、ほとんど知らない。
「塩化リゾチーム」や「塩酸プロムヘキシン」の名前は聞いたことがあっても、果たしてそれらは何に効くんだろうか。「トラネキサム酸」も耳に残ってはいるんだけど、あなたはドチラサマですか。「グリチルリチン酸ジカリウム」とカツゼツよく発音する中村雅俊を思い出す。アンタそれが何か知ってんのか!
逆ギレしてもしかたがない。CMだ。すべてはCMから耳に入ってきた言葉なのだ。知らない間に刷り込まれた言葉。何度となく聞いているうちに違和感は消えた。
僕らはカタカナに弱い。しかも僕は文系人間。化学にもうとい。いまだに「水兵リーベ、僕の船」の後が思い出せず、「我が世誰ぞ常ならむ」と続いてしまう。それはまあいい。つまり、知識がないから、カタカナ系の化学物質が出てくれば聞こえがよく、「なんだかよさげ」と思ってしまうのだ。
それに「配合」と聞くとオトクな感じがする。頭のいい人たちが日夜研究してつくったものを、知らない間に入れてくれているわけだから。しかもそれが「1000ミリグラム」も入っているというから、「もうすいません、そんなにたくさん」という気分にもなる。よくよく考えれば「1グラム」だけど、そんなことはどうでもいいのだ。誰も気になんかしない。
うーん。
「頭がいいとされている人」の「聞こえのいい言葉」を「繰り返し刷り込まれている」と、「知識のない人たち」は「疑問を感じなくなる」のか。
ふと思い浮かんだのは、ヒットラーと純ちゃんだった。
2004年02月12日(木)
|