覚えているだろうか。80年代のアイドルのコンサート。客席には必ずお揃いのハッピを着たお兄さんたちがいた。そう、キミドリやピンクがまぶしい、テカテカのハッピ。もちろんハチマキもコーディネイトだ。お兄さんたちは手を口の横に当て、前かがみなりながら、声を揃えて「エル・オー・ブイ・イー、ア・キ・ナー!」と絶叫していた。アツい。僕はテレビでそれを見て、ムズ痒い思いがしたのを覚えている。
夕べのサッカー日本代表の試合で、僕は彼らの亡霊を見た。やはりここでも客席の中だ。色こそブルーになっていたけれど、お揃いのテカテカ服は変わらない。2004年のお兄さんは、サッカーを愛しニッポンを愛するあまり、感極まって目に涙を溜めていた。おいおいキャンディーズの解散かよ。アツいな。テレビの前の僕は、やっぱりまたムズ痒かった。
そうそう、サッカーにおけるムズムズにはもう一つある。Jリーグの試合でよく見られるのだけれど、応援するチームが負け、選手を罵倒しているサポーターのなかに、必ずといっていいほど半裸の男がいるのだ(ちなみに、だらしない体であることが多い)。アツすぎ。ムズッ。
どうして僕はそれらにムズムズしてしまうのか。気になってちょっと考えてみた。思い当たったのは、どのケースも「熱烈なファン」に成り切っていて、見ているほうがコッパズカシクなるほどだということ。それでも本人たちは自分が滑稽に映るなんてことは考えもしない。もちろん、楽しみ方は人それぞれだから僕がとやかくいう筋合いではない。いずれにしても、この「熱烈ファンのアツい盲目現象」は二十年の時を超え、今なおこの国に根付いているようなのだ。
80年代も今もアツい盲目。そう考えると、これは竹の子族とパラパラの関係にも少し似ている。竹の子族という名前を聞いただけで、もうすでにムズい。そしてパラパラ。あの滑稽な踊りを思い出す……。
ムズムズムズッ。
2004年02月19日(木)
|