diary/column “mayuge の視点
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難しいほう

 ある友だちの女の子がかつて進路に迷ったときに、父親に相談をしたらしい。すると普段はあまり言葉を交わさないお父さんが、彼女の目を見てこういったそうだ。

 「道が二つあったら、難しいほうを選びなさい」

 むむむむむ。僕は感動で言葉に詰まった。こんなことをいえるのは、このお父さんと金八先生ぐらいなんじゃないか。

 いいですかぁ、皆さーん。あなた方がこれから生きていく人生というのは、たいへん険しい道です。そこで大いに、もがき、苦しんでください。困難にぶつかっても、自分の境遇を嘆くんじゃなあい! 克服するために自分自身で闘うんですっ(絶叫調)。そうして自分を高めていってほしいと、先生思います。いいですかぁ、人という字は……(以下省略)。

 無口なお父さんはそこまで口に出せなかったにせよ、思いはヒシヒシと伝わってくる。生きることの価値を「挑戦」に見出したお父さんの、人生観がにじみ出ているような言葉だ。カッコええなー、おっさん。

 その話をしてくれた友だちは、「難しいほう」を選んで磨かれたらしく、そのとき確かに素敵な人になっていた。ちょっと化粧は濃かったけど。

 大切な人が苦しい思いをするのは、近くにいる者にも辛いこと。快適な道を歩いていつも笑っていてくれたほうが、こっちだって楽しいに決まってる。でもそれって、自分サイドの単なる身勝手なのかもしれないな、とも思う。その人の本当の幸せを願うのなら。

 ただ側にいて、付かず離れずとなりを歩く。これって実は相当難しいんだよなあ。でも、そうなれたらいい。つまりこれもまた、「難しいほう」を選べ、ということか。

2004年02月26日(木)

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