diary/column “mayuge の視点
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GREEK JOKE

――2004年6月某日
(工事の音) ガガガガガガガ……
 「オリンピック開幕まで、残すところ2ヶ月となりました。会場等の建設作業が遅れている模様ですが、このままのペースで本当に間に合うんでしょうか?」
 「οχι,οχι,φιλοζ (いやいや、友よ)。何が心配だっていうんじゃ? 当日に出来上がっておれば、それでええんじゃろうが?」
 「はあ、しかしこの建物なんかの状況を見るとですね……」
 「チッチッチ。お前さんらセレス(古代ギリシャ語で「中国」)の連中は、“四千年の歴史”がまるで自分たちの専売特許のように言っとるが、こっちだって文明発祥から四千年じゃからのう。甘く見てもらっちゃあ困る」
 「あのう……、中国じゃなくて日本人なんですけど……」
 「ええんじゃよ、そんなこたあ。どっちだって一緒じゃろうが。よいか、ワシたちはこうしてワシたちのペースで道を作る、コンクリを打つ。昔からこうしてやってきて今の世界の繁栄があるんじゃ。大丈夫じゃ。こちとら四千年じゃからのう、四千年。分かるか? ウッホッホッ」
 (小声で)「あなた方もこだわるんじゃないですか、やっぱり……」
 「なんじゃ?」
 「あ、いや、何でも。じゃあ8月にまたお会いしましょう」
 「うむ。心配するこたあない。ムサカ(ギリシャ料理)でも食べて国に帰るんじゃな。料理だって“四千年”じゃからのう、ウッホッホッ」


――2004年8月29日(大会最終日)
(工事の音) ガガガガガガガ……
 「あ、いた! おじさん。やっぱり全然間に合わなかったじゃないですか!」
 「ん? おうおう、あの時の中国人か。どうじゃ、素晴らしい大会じゃろう」
 「ていうか今日はもう最終日で、男子マラソンがスタートしましたから、たった今」
 「おうおう、そうか。それは何よりじゃ。マラソンはオリンピックの花じゃからのう。ときにお前さん、“マラソン”の語源を知っておるか?」
 「そんなの子供でも知ってますよ」
 「そうか。四千年じゃからのう。ウッホッホッ」
 「笑ってる場合じゃないですよ。謝罪の言葉のひとつでも聞きたいって、みんな思ってますよ。間に合いませんでした、ごめんなさいって」
 「何を言っておる! 誰が間に合わないと決めたんじゃ。お前さんはマラソンという競技を知らんようじゃな? どんなに速い奴でも、ゴールまであと二時間はあるということじゃ。ウッホッホッ」
(再び工事の音) ガガガガガガガ……

2004年06月14日(月)

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