月の輪通信 日々の想い
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2003年05月17日(土) 自分の体

掲示板で自家中毒症のことが再度話題にあがったと思ったら、タイミング良く(?)アユコのゲ
ボゲボがやってきた。

4月の新学期、5月のアユコ一人旅、オニイの入院、ロッジでバーベキューとあわただしく過ご
したので、そろそろ来る頃かなとは思っていたけれど・・・・

学校から帰ってきたアユコは、おなかが痛いと元気がなくて、居間で夕飯もそこそこに、ごろご
ろしていたら、夜遅くゲボゲボが始まった。

自分で前兆が判るようになってきたのか、食べるのを控えていたせいもあって、出てくるのは
最初から胃液ばかり。

おなかは空っぽのはずなのに、時間をおいて繰り返す吐き気。腹痛。

「いやだなぁ、いやだなぁ。」

アユコがうめく。

「しょうがないねぇ、大丈夫、大丈夫。」

アユコのぺったんこのおなかをさすりながら、声をかける。



いやがっても仕方がない。

ゲボゲボするのも君の体。

近眼の目も、固くて濃い髪も、跳び箱が苦手な手足もみんな君が一生つきあっていく君の体。

おかあさんも、君を完璧に産んだつもりだったけれど、小さな病気や不都合な体質の一つや二
つはみんな持ち合わせて生まれて来るんだね。

その代わり、細身のジーンズのよく似合う華奢な体型や、手芸やお料理の上手な器用な手、
虫歯のないきれいな歯並びも君は持ってる。



ここ数年のうちに、アユコには生理も始まるだろう。

私自身、中高生の頃は生理痛がとても重くて、毎月決まって、いまのアユコの様に「いやだな
ぁ。」とうめきながら、苦しい夜を過ごした。

市販の鎮痛薬では効かなくて、畳をかきむしるように苦しむ娘に、普段落ち着いている父が
「救急車を呼ぼうか」と言い出したこともある。

さすがに母は、「そこまでは・・・」と思ったか、近所の内科医で強めの鎮痛剤をもらってくれた。

「女に生まれついちゃったんだから、仕方がないねぇ。」

そういって、私が私の体と戦うのを黙って見守っていてくれた母。

女が年齢を重ねるに連れ、じっと痛みをやり過ごす強さを身につけていくのは、こんな苦しい夜
の繰り返しのためだろうか。



あんなにひどかった生理痛も5回の妊娠出産の間に嘘の様に消えてしまった。

苦しい苦しい夜もいつか消えてなくなる日が来ることもある。

アユコのゲボゲボも、ある時、「あれ、そういえば、近頃吐いてない。」と気付く日が来るかもし
れない。

一晩中は吐き続けて、明け方になってようやく落ち着いて眠りについたアユコ。

まだまだ幼い寝顔ながら、はげしく揺れ動く思春期の少女の気むずかしさが、どことなく漂い始
めている。

この子が戦っていく苦しい夜は、まだまだ続く。

母に出来ることは、「大丈夫、大丈夫」と呪文を唱えて、一緒に朝を待つことだけ。

アユコの体は、アユコだけのもの。

自分の体の不都合は、自分で受け入れ

てやり過ごすより仕方がない。






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