月の輪通信 日々の想い
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2003年06月05日(木) 回収

木曜日は習字にいく。

習っているのは、私とアユコ、そしてオニイ。

それに、おつきあいのアプコを車に乗せて、先生宅へ向かう。



オニイが中学入学前後に「僕も習字を習いたい」と言い出してから、木曜の放課後は忙しくなっ
た。

まず3:30にアプコを園バスから受け取り、小学校の門の前でアユコをのせる。

そこから、中学の近くでオニイをひろって、教室へ滑り込む。

私は携帯電話は持たないし、子ども達の下校時間もまちまちなので、3人の子を無事「回収」
できると、それだけでほっと疲れてしまう。

今日は、あれほど念を押していたのに、アユコが教室から出てくるのがとても遅くて、オニイの
回収が遅くなってしまった。

アユコにも、彼女なりの理由があって出てくるのが遅くなったようだが、園バスから直行で眠そ
うなアプコや、炎天下で待っているかもしれないオニイのことを考えると、アユコの遅刻にもいら
いらする。

「早く帰るのが嫌なら、習字、やめてもいいのよ。」

ついつい乱暴な叱り方をしてしまう。



学校帰りでおなかをすかせている子供らのために、今日は海苔おにぎりをお弁当箱に詰めて
持って来た。

「お、うまそう!」

車の中で、オニイがさっそくかぶりつく。

眠そうだったアプコも俄然元気を出して、おにぎりに手を伸ばした。

おなかをすかせた子が、おにぎりを頬張る瞬間が私は大好きだ。

「子どもを育てている」と言う実感がダイレクトに感じられる気がするからだ。

「お茶も入れてきたよ。」

オニイがペットボトルのお茶を、ごくごくと気持ちよく飲み干した。

叱られてシュンとなったアユコだけが、「あとで食べる」とお弁当箱の蓋を閉めた。



「オカアチャン、おにぎりあと一個誰が食べるの?」

腹ぺこアプコはオネエの残したおにぎりが気になって仕方がない。

「じゃ、いいよ。アプコが食べな。蓋、自分で開けられる?」

喜んで、タッパーの蓋を開けるアプコ。

「あ!」

・・・・やっぱりやっちゃった。

蓋を開け損なって、残念、おにぎりは車の床に転がってしまった。

「あ〜あ、もったいない。」

泣きそうな顔で落ちたおにぎりを見つめるアプコが可哀想になって、私はちょっといらいらして
いた自分を振り払った。



「おむすび、ころりん、すっとんとん。」

車を走らせていると、後部座席からアプコの小さな声。

「あはは、それなぁに?」

「幼稚園の紙芝居で読んでもらった。」

「おむすびころりんね。ホントに、ころりんだったねぇ。」

絶妙のタイミングで聞こえてきたアプコの独り言。



ああ、子どもって面白い。

誰かがイライラを運んでくるかと思えば、誰かがそれをうち消すおマヌケな爆笑も運んできてく
れる。

子沢山でよかったなと思うのはこんな時。

子ども達に助けられて、私は「4児の母」を何とか続けている。

バラバラに散らばったビー玉を「回収」するのは大変だけれど、集まったビー玉は互いに輝き
を分け合って、格段に美しいのだ。




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