月の輪通信 日々の想い
目次過去未来


2003年06月10日(火) 卵焼きの味

昨日、だしまき卵を頂いた。

ふわふわで、おだしの味がしっかりついた卵焼き。

「甘いお菓子もいいけれど・・・」

とおみやげに頂いた卵焼きは、さっそく夕食の食卓に上った。



人生最後の瞬間に、是非とも食べたい食べ物はなあに?

私はいつも迷わず「バニラアイス!」と答えるのだけれど、父さんはどうやら京都のどこやらの
老舗のだしまき卵が食べたいらしい。

臨終の瞬間に、ぼそぼそ食べる卵焼きってなぁ・・・って私は常々思っているんだけれど、確か
にだしの効いた薄味の上品なお味は、体が弱っているときにもおいしいかもしれない。

父さんがイメージしている最高のだしまき卵がどんな味なのか、私はまだ、試食したことがない
のだけれど、ちゃんとお勉強しておかなくてはねぇ。

最後に食べたい味が、毎日食べてる私の手料理の味ではないのがちょっと口惜しくもあるのだ
けれど・・・・



だしまき卵に限らず、「卵焼き」って、いろいろな家庭にそれぞれの味があって、お隣の卵焼き
って、いつもちょっとお味見してみたくなる。

主婦が、「一品持ち寄り」のパーティーをすると、手の込んだ珍しいお料理より、「ごめん、冷蔵
庫に卵しかなかったの!」と恥ずかしげに出てくる卵焼きの方が人気があったりする。

お弁当によく合う濃いめの卵焼き、しっとりだしを含んだだしまき風、だしの代わりにミルクの入
った洋風・・・

見た目も、しっかり簾で巻いた本格派から、「え、スクランブル?」って感じの物まで、本当に多
種多様だ。

しょっちゅう、家庭で当たり前に作る卵焼きが、意外とその家のお料理のあり方を語っている
のかもしれない。



我が家では、アユコが卵焼き名人。

数年前の夏休み、「卵焼き名人になろう」と称して、毎朝、毎朝、卵焼きを作った。

卵をパカッと上手に割ることから始まって、コンロに火をつけること、目分量で味付けをするこ
と、お箸で上手にまきあげていくこと。

何回も何回も繰り返す事で、覚えていく。

先日、TVで、エディソンやイチローを例に挙げて、「天才」の条件の一つとして、「結果の正否
に関わらず、次々に数をこなす」ということを上げておられた。

確かに1回、2回、お手伝いでお料理をしたくらいではその実力は定着しない。

失敗しても気にせず繰り返すことで、上達していくのだ。

もっとも、作る方も作る方、食べる方もさすがに毎日の卵焼きには閉口したが、アユコの料理
は、ツクツクホウシの鳴く頃には格段に腕を上げた。

今では、アユコに卵焼きを任せると、フライ返しを使わずに御菜箸できれいな卵焼きを作ること
が出来る。

最初から最後まで、一人で作れるお料理があると言うことがアユコにとっては大きな自信の一
つになった。



「さあ、今日はおいしい卵焼きを作ろう」

ちょっと余裕のある朝ご飯の時には、しっかり気合いを入れて卵を焼く。

子ども達が好きなのは、少し味の濃いめのかっちりした卵焼き。

父さんが好きなのは、薄味でだしをしっとりと含んだ柔らかな卵焼き。

主婦になって、何度も何度もこしらえてきた卵焼き。

作るたび、ちがった味だった新婚時代と違って、いまではある程度定着した味の卵焼きを作る
ことが出来るようになった。

でも、ね・・・。



頂き物のだし巻き卵。

さすがにプロの味。父さんが目を細めて嬉しそうに味わっている。

「人生最後の味はこんな味?」

「う〜ん、どうかなぁ・・・・」

父さんの味のハードルは高そうだ。

「おいしいね、今日の卵焼き・・・」

子ども達も次々に箸をのばす。

よーし、私も基本に帰って、とびきりおいしい卵焼きを作ってみよう。

「おかあさんの卵焼きが食べたいな。」って言わせることができるかな?




月の輪 |MAILHomePage

My追加