月の輪通信 日々の想い
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2003年06月20日(金) ジャーン!

今日は朝から忙しい。

生協だ。5年生の親の親睦昼食会だ。参観日だ。剣道だ。

気合いいれていこう!



・・・て、半べそかいて、うっとおしい顔で起きてきたのは誰?

「なんか、学校、行きたくない。」

アユコだ。参観日がいやなのかな?それとも体調不良?

「なんで?なんか、やな事あるの?」

忙しく朝食の準備をしながら、アユコのご機嫌を伺う。あらら、アプコもパジャマでうろうろしてる
よ。手短にね。

「べつに・・・。でもね・・・・」

なんだかはっきりしない。う〜ん、悩み相談は昨夜のうちにしておいてくれ〜!



「さ、話を聞こう。」

食卓の準備をし、オニイとゲンを座らせてからアユコの話を聞く。

「何が嫌?参観日?」

「・・・・音楽」

「はぁ?」

アユコのクラスの先生は音楽が専門。とってもノリのいい楽しい授業をなさる。アユコも音楽の
授業は楽しみにしているのに・・・

「なんで、音楽が嫌なの?」

「・・・・できないの。」

「なにが?」

「・・・・合奏。」

「そんなに難しいことやってるの?リコーダー?」

「ううん。」

「じゃ、マリンバとか?ピアノ?」

「ううん。」

「え?じゃあ、何?」

アコーディオン?太鼓?鉄琴?

次々聞いてみたけれど、アユコはぶんぶん首を振るばかり。

「ねえ、楽器だけでも教えてよ。まさか、カスタネットとか?」

「・・・・違う。」

「じゃ、なによ?」

「・・・・シンバル。」

「はぁ?」

あの「ジャ〜ン」ってやる奴ですか。

あれって、そんなに難しいの?

ふふっと吹き出しそうになって必死にこらえた。アユコの顔は真剣だ。



人一倍、緊張しーで、完璧主義者のアユコ。

大好きな先生の音楽の授業だ。

きっと、とっても気合いを入れて合奏に取り組んでいるに違いない。

いつもよくやるリコーダーなどと違って、シンバルのパートは一人だけ。

おまけに出番は少ないけれど曲のポイントになる重要な部分でジャーンとやるだけに、アユコ
の緊張は極度に高まるのだろう。

みんなの演奏が進む間、重いシンバルを手に緊張に打ち震えるアユコの姿が思い浮かぶ。

でもねぇ、苦手な楽器がシンバルって・・・・

やっぱりちょっと笑えちゃう。



「大丈夫。練習すれば出来るようになるよ。これまでだって、いろんな事、出来るようになったで
しょ?」

「・・・うん、でも・・・」

アユコの顔はまだ晴れない。

「ねぇ、どうしてシンバルになったの?先生があてたの?」

いつも太鼓やシンバルなどの大きな音の楽器は、男の子達に人気の筈なのにね。

「ちがう。私がやってみたかったの。」

・・・て、答えたアユコの表情が少しやわらいだ。

そうだ、自分で選んだんだった!

その事に気付いたアユコが、自分で涙を拭い、ぐいっと胸を張ったのがわかった。

「・・・・元気出た?」

「うん、ちょっと。」

「よかった。音楽なんてね、まず楽しくやらなくっちゃ。さぁ、急いでご飯食べといで。」



何とか短時間で悩み相談が片づいてほっとしていると、今度はアプコ。

「・・・・あのね。幼稚園、いきたくないの。」

今度はあんたかい。

「どうして?」

「給食がいやなの。」

「なんで?ゼリーとウインナーとか好きな物いっぱいでるでしょ。」

「でもいややねん、お野菜はいってるし・・・・」

悩みが尽きんなぁ。



子どもには子どもなりの、「いやだなぁ・・・」があるんだな。

はた目には、吹き出しちゃいそうな些細な悩みでも、本人にとっては一大事なんだ。

何となく憂鬱な気分。

一日中、心のすみに残る小さな棘。

幼いこどもにすら、気分の重い朝はくるのだ。

・・・でもね、逆に言えば、本人にとっては一大事でも、他の人が外から大きな目で見れば、
「何、それ?」って、笑っちゃいそうな事もある。

大丈夫。

大丈夫。

そんなこと出来なくったって、地球が滅亡するわけじゃなく・・・



そうなんだよ。

がんばれ、私。

ジャーン!

景気よく、シンバルを打ちならそう!


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