月の輪通信 日々の想い
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2003年06月27日(金) 少年よ

最近オニイの成長ぶりが著しい。

小さいときから身長が伸び悩み、いつもクラスでも一番前。

体重も驚くほど少ないので、この年齢の男の子にしてはスタミナも足りない。

毎日牛乳を飲んでも、いっこうによその男の子達の成長に追いつかないのが悩みの種であ
る。

「男の子は中学高校でぐぐ〜んと伸びる時がくるよ。」

と誰もが期待を持たせてくれるのだけれど、ホントにそんな時期がくるのかなぁと不安になって
きた今日このごろ・・・。



「おかあさん、背比べしよう。」

この間オニイからの突然の申し出。

実はオニイ中一にして、とびきりチビの私の身長をまだ超えていない。

「母の身長を超える」

が、当面の彼のささやかな目標であったらしい。

どれどれ・・・。

オニイと背中をあわせて立ってみる。

おお・・・!

少年の背丈は、ちょうど40才になった母とおんなじ・・・・いや、越えたかな?

微妙なところ。



そういえばこのごろちょっとたくましくなってきたわねぇ。

細っこいながらも、肩幅が張り始め、靴のサイズもぐぐん一つとばし。

帰宅して、脱ぎ散らかした制服には、少年らしい汗の匂いに混じって、男っぽい体臭が感じら
れる様な気もする。

毎朝、ママチャリをとばして、登校していく後ろ姿には、もうお子ちゃまのふわふわした遊びが
見られなくなった。

風呂上がりのトランクスの膨らみも、小学生のそれとは格段に違ってきて、母は目のやり場に
困るようになってきた。



先日、学校で、ちょっとしたトラブルがあった。電話を受けて飛んでいったら、オニイが保健室
で座っていた。

この時の事情は、本人が「絶対HPはのせるな」と言うので詳しくは書かないが、私が驚いたの
は、おこった事件の内容ではなく、迎えに行った母を見上げたオニイの表情であった。

小学生の時、同じ様な状況で見せた困惑したオニイの目。捨てられた子犬のように助けを待
つ、いじらしい子どもの表情。あの、「かわいそうに!}と抱きしめたくなるおびえた表情がその
ときのオニイにはみじんも感じられなかった。

それよりむしろ、馬鹿なケンカで傷ついて、不機嫌にふてくされたような、一昔前の青春映画に
出てきそうな怒りの表情が混じっている。

あとで、状況を問いつめる私に母に答えるのも言葉少なで、まるで、母の介入にいらだってい
るような感じさえも受ける。

「オカンの出る幕じゃないよ。」とでも言いたげな少年らしいしかめっつら。



ああ、またオニイが私の手から羽ばたいていく。

ぴしゃりと扉を閉めて母の侵入を許さない男の子の領域が、オニイの中で少しづつひろがって
いく。

「何が食べたい?」

「何がしたい?」

柄にもなく、たまにオニイの機嫌をとってみる。

「別に・・・」

この素っ気なさが、母の背丈を超えるか否かの微妙なポイントでもあるようだ。




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