月の輪通信 日々の想い
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2003年07月02日(水) 個展を終えて

一週間の個展が終わった。

義兄と一緒に搬出を終え、ちょっと疲れた顔で帰ってきた父さん。

連日の徹夜に続く、慣れない百貨店内での一週間。

肉体的にも精神的にも、かなりきつかった筈だが、それでも多くの作品を生みだし、たくさんの
お客様に見ていただいたという充実感で、ほっとしている様子。

芳名帳だの、売上票だのには現れない、父さんの戦いぶりを毎日そばで見てきただけにこち
らもどっと気が抜けてしまう。



2年に一度の地元百貨店での個人展。

毎回、楽しみに来て下さる常連さんのお客様も多い。

「以前の○○は良かった。」

「これは新しい試みですね。」

何度かおいでになったお客様の中には、怖いほど以前の作品をしっかり覚えていらっしゃる方
もあって、気が抜けないという。

とてもとても有り難い事だ。



「HP見てますよ。」

とおっしゃるお客様も増えたそうだ。

作品写真の更新のペースが落ち、日記サイトになりつつある月の輪通信だが、ここを通じて、
主人の仕事を身近に感じて下さる方が増えるのは嬉しい。



「生活の匂いを感じさせない」

洗練された女性の条件の一つに、お勝手の匂いやお洗濯の愚痴など感じさせない爽快さがあ
る。

立派なおばさん化した私には縁のない美徳の一つだが、果てさて、主人の作品についてはどう
なんだろう。

雄大なヒマラヤの遠望や、霧に煙る深い竹林の風。

父さんの作品に現れる風景は、どこか人智を離れた桃源郷の匂いがする。

そしてあの色彩。

深い深い深海の碧。夏の木立の力あふれる緑。

光と陰を同時に含んだ陶器の深い色彩はそれだけで、誰かの心を癒す。

私のすぐそばにある主人の手が、この美しい風景を描き、色彩を生み出すのだということが、
ただただ誇らしい。

「みて、みて!うちの人の作品はこんなに美しいのよ。」

そんな気持ちのままに立ち上げたこの月の輪通信。

それが、今では、「芸術家の生活」とはほど遠い、「ひしめく4人の子ども達」や「不惑のオンナ
の憂鬱」ばかりが綴られているようで、果たしてこれで・・・?と自問自答してしまう。



個展終了の祝杯もそこそこに、父さんはまた窯の温度点検に出ていく。

個展期間中も、工房の窯は休むことなく、次の窯展の作品が次々と焼き上げられていた。

朝食の前に窯詰めして、あわただしく着替えて会場に向かい、帰ってきては遅めの夕食のあ
と、工房に戻る。

ともすれば、日常の細かな雑事は二の次で仕事にのめり込んでいく父さん。

「マイホームパパ」の仮面の下の激しい芸術家の情熱を、もっともっとお伝えしなければ・・・と、
心に誓ってはいるのだけれど。



今回もこのHPを通じて、お知り合いになった方が遠方よりわざわざ父さんの作品を見に来て
下さった。

私のささやかなHPが、父さんの作品とどこかの誰かをつなげる橋になることができた事を心か
ら嬉しく思う。

ありがとう。


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