月の輪通信 日々の想い
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早朝実家を出て、自宅に戻る。
通勤時間帯にかかるかと思ったが、大した渋滞もなく「ゴミ収集」に間に合う時間に、うちにつ いた。
夜には台風10号が近畿を直撃しそうだという。
金曜の夜は、男の子達の剣道の稽古。
帰省から戻ったばかりで、夜の稽古はちょっとしんどい。
早めの夕食を用意して送り迎えに奔走する母もお疲れ気味。
「警報出てるけど、お休みにならんかなぁ。」
親子共々、口には出さぬが、怠け心がちらちらと舌を出す。
夕方になっても雨も風もまだ出られないほどでもない。
「練習中止」の連絡網も回ってこない。
「やっぱりあるかなぁ。」
「先生が誰も来られてなかったらどうしよう?」
「こんな時こそ、出席してアピールする絶好の機会よね。」
「う〜ん、どうするかな。」
時間ぎりぎりまで迷って結局、GO!
ええい、雨よ、降らば降れ。
風よ、吹けば吹け。
少年剣士達を乗せ、オカアチャンの軽自動車がぶるぶる発進する。
やはり、どこの家でも同じ様な葛藤があったようで、子ども達の稽古の出席率は50%。
先生方も「稽古が終わる時間ぐらいまでは、台風も大丈夫でしょう」といつも通りの稽古が始ま った。
少数精鋭で、心なしかいつもより熱のこもった今日の稽古。
「やっぱり、稽古に出てよかったな。」
帰りの車中でオニイの一言。
ナントカ今日も怠け心にうち勝った子ども達に拍手。
そして、送迎の母にもね。
「やだな、さぼっちゃおっかな。」
って、フラフラと傾いてしまいそうなこと、いっぱいあるよな。
子どもだけじゃなく大人になってもいつまでも、自分のお尻に鞭打って、重い腰を上げなければ ならない事ってしょっちゅうある。
「ええい、やめた!」と投げ出して楽になることも出来るのだけれど、「それでもやっぱり・・・」と 誘惑にうち勝たねばならない時もある。
これから、何度も何度も、「さぼっちゃおっかな」という誘惑と戦うであろう子どもたちに、「やっ ぱり、さぼらなくてよかったよ。」という満足感を覚えさせておきたくて、意地のように踏ん張って 稽古に送り出す。
ホントは一番さぼりたいのは、雨の日の運転の苦手な母なんだけどね。
オニイが、剣道を始めたばかりの頃から、休むことなく稽古をつけて下さっていた先生が、ここ 数ヶ月、稽古をお休みしておられる。
鬼瓦のような風貌の大きなお声の老剣士。オニイは大好きなこの先生に竹刀の握り方や道場 での挨拶の仕方から、直々に指導していただいた。
少しお耳が遠く、時々話の通じない時もあるちょっと煙たい先生だが、誰よりも早く道場に現 れ、稽古前の掃除から子ども達と一緒になさる。
時々お酒臭いこともあるけれど、小さい子の頭をくしゃくしゃ撫でる笑顔は、なんとなくかわいら しい。
オニイはこの先生を通して、「強いオトコ」「なりたい大人」のイメージをふくらませてきた。
その先生がある日を境に、道場に姿をお見せにならなくなった。
持病が悪化なさったか、ご高齢で稽古がきつくなられたか・・・
もう道場には来られないらしいと言う噂だ。
老剣士の姿のないまま、いつものように道場の稽古は続く。
「K先生は、ホントにもう来られないんだろうか。」
稽古のたび、オニイの目がそこにはないK先生の姿を探す。
K先生にいつも指導していただいていた「型」も相棒のTくんと二人で自習。
今月末の昇級審査に向けて、しっかり稽古すべきなのだけれど、厳しいK先生の姿がないとい まいち気合いが入らない。
ほんとにねぇ。K先生、来ていただきたいよね。
防具なんかつけなくてもいい。
道場の真ん中で腕組みして、にらみを利かせていて下さるだけでいいのにね。
せめて、今度の昇級審査に通って晴れて一級になれたら、一緒に報告に行こうよね。
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