月の輪通信 日々の想い
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どういう風の吹き回しか、アユコが朝から家中、掃除機をかけてくれた。
盆踊りの外出続きで荒れ果てた我が家に耐えかねたか、「埃では死なない」とずぼらな母を見 かねたか。
ついでに他の兄弟達をあごで使って、乱雑に散らかった部屋の整理整頓までしてくれたので、 我が家は久々に「豚小屋」返上。
めでたい。
きれいに片づいた洗濯部屋で、久々にミシンを拡げる。
使い古したハンドタオルやバスタオルをカタカタ縫って大小さまざまな雑巾を作る。
バスタオルサイズの大きな物は、剣道の道場の足拭き用。
分厚くなって絞りにくいのだが、このサイズが必要なのだ。
20�儚僂離魯鵐疋織�ルを2枚、合わせた物は台拭き用。
次々使い古しが溜まる小さなタオルは可愛いイラスト入りだし、ちょっとした台拭きには便利な サイズだ。
普通のフェイスタオルを4等分した雑巾は新学期の学校用。
思いついたときにたくさん縫っておかないと、「一人2枚づつ」が4人も重なった日には、泣く泣く 新品タオルを雑巾用に下ろす羽目になる。
扇風機をガンガン回して、汗だくになりながらミシンを踏む。
「踏む」といっても、電動ミシンなのでスイッチのペダルをグィ〜ンと踏むだけなのだけれ ど・・・。
直線縫いばかりなので、な〜んにも考えずにただただ無心に針を進める。少々縫い目が乱れ ようが、途中で何度も引き返そうが気にしない。
おおざっぱな私には最適の縫い物だ。アタマの中を空っぽにして、ただただミシン針の上下運 動とを目で追っていると、惚けたようで心地よい。
コレはコレで、ストレス解消に有効かも。
・・・・とおもっていたら、なんだか、針の動きが重い。
ちっと舌打ちして、下糸のカマを掃除し、気を取り直して再度挑戦。
・・・・でも、なんか、調子悪い。
それでも騙し騙し、針を進めていたが、あと数枚と言うところになって、とうとう、針がうんともす んとも動かなくなってしまった。
嫁入り道具として購入して以来、新居の2DKのカーテンから始まって、子ども達の服、幼稚園 グッズ、父さんの仕事用エプロン。
カタカタ律儀に働いて来てくれた相棒ミシンが、突然がんとツムジを曲げて、にっちもさっちも動 きもしない。
ありゃりゃ、参った。
一番近所のミシンやさんは、現在長期休業中。修理が必要ならどこへもっていったものかしら ん。
気を取り直して立ち上がり、とりあえずミシンの取り扱い説明書を探し出す。
そういえば購入して以来、説明書なんて見たことないなぁ。
捨てずに置いてあっただけまだましか。
パラパラ見てみると、家庭で出来そうな手当は、ミシン内部の掃除と、注油のみ。
ミシン内部の図解とともに、何点もの注油ポイントが書いてある。
そういえば、このミシン、一度も注油なんかしたことがない。カバーを開けたのは数年前、手元 のランプの電球が切れたときのみだ。
ドライバーを捜してきて、おそるおそる、カバーを開ける。
昔、家庭科の本で見た、クランクや歯車の複雑に絡まったミシン内部。ギコギコうごかしてみる と、ベルトからの動力が、順々に送られて針先まで到達する過程がよく分かる。
ふ〜ん、なるほど。こうなっていたのか。
テレビやラジカセなどの複雑な電気機器とは違って、旧式の電動ミシンはその作りと仕組みが 単純で分かり易い。
要所要所に注油し、ついでに古歯ブラシで、埃やら糸くずやら古い機械油の汚れを落とす。
十数年ぶりのメンテナンス。
さあ、どうだ。
ギ〜コギ〜コ、先ほどまで歯を食いしばって動こうとしなかったミシンが渋々、動き出す。
そして注油した油が歯車になじむと同時に突然、トゥララララ・・・・と軽やかに針棒が動き始め た!!
結局、突然の不調は、注油切れと古い機械油汚れのせいだったのか・・・。
要するに、必要な手入れもせずに、気が向いたときだけこき使う縫い手に、ささやかな反抗を 試みたということらしい。
単純な機械の人間味あふれる不調の原因が判明して、何とも可笑しく、うふふと笑ってしまう。
のこり数枚のの雑巾を縫い上げ、さっそくその新しい雑巾でミシンの外側のカバーを拭いてみ る。
長年の手垢で汚れたカバーも、本来の白さをいくらか取り戻す。
「愛着ある道具」
そのありがたさは、日常の用途にはついつい忘れがちで、故障でもしない限り、手入れをした り、注油をしたりを怠りがちだ。
わずかな注油と、ほんの少しの手入れ。
それが必要なのは「機械と人」の間だけではなく、当たり前にそばにいる大切な人との間に も・・・と思いつつ・・・・
夕食には、父さんの好きなしめ鯖の一皿追加。
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