月の輪通信 日々の想い
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2003年08月28日(木) ゲンの散髪

この夏、一番に宿題を終わらせたのはゲンだった。

(さすがに夏休み初日から、工作の木材を買いにいけと催促しただけの事はある。)

得意満面のゲンはラストスパートに入ったオニイやアユコのそばにいると、ついつい要らぬお
節介をして、オニイ、オネエを怒らせるので、ちょこちょこと買い物や、ちょっとした所用にと連
れ出す。

4人兄弟の3人目の宿命か、ゲンを単品で連れ歩く機会は少ない。剣道だっていつもオニイと
一緒、たまに行く買い物にはたいがいアプコがついてくる。

「ゲンと二人きりでデートだ、うれしいな。」

久しぶりに助手席に座るゲン。

母も子も、慣れないキャスティングにちょっとぎこちない。



年の近い兄弟がたくさんいると、「仲良くていいね」とよく言われるけれど、どうしてもその中で
上手くいく組み合わせと、「くっつけておくとろくな事がない」組み合わせがなんとなく存在し、どう
も、ゲンは他の兄弟達から一歩離れた位置を取ることが多いようだ。

いつも元気で、サービス過剰。

自分の本能に忠実で、熱しやすく覚めやすい。

移り気なようで、結構執念深い。

オニイ、オネエには生意気といわれ、アプコからは家族の中で唯一の「同格のケンカ相手」扱
いを受け、ちょっとワリを喰っている感がある。

ま、兄弟のまんなかあたりには、たいがいこういうアウトサイダーが存在するものだけれ
ど・・・。



今年もゲンの夏休みの工作は木工。

年に一度、父さんと鋸や金槌を使い、簡単な大工仕事を経験する。

元来、こういう作業に向いているのはオニイよりゲンの方かもしれない。

唇を引き絞り、ぐっと眉をしかめて、鋸の動きに集中するゲン。

幼児がお絵かきにぐっと没入するような、我を忘れての集中力がまだこの子には残っている。

移り気なゲンが時折見せる真剣な表情に「男の子って、おもしろいよなぁ。」と思う。

ま、集中力が途切れるのも早くて、すぐにやりかけの作業や道具類を放り出して、、どこやらへ
遊びに言ってしまうのもご愛敬ではあるが・・・。



今日は新学期を前に伸びきった髪を散髪に出掛けた。

普段スポーツ刈りのゲン、散髪をちょっとさぼりすぎて、すっかりモンチッチ状態になっていた。

いつもの散髪屋さんは思いの外、混んでいて、30〜40分かかるというので、ゲンを散髪屋に
置いて、私は下のスーパーで買い物。しばらくして、散髪屋にもどってガラス越しに見ると、最
後の仕上げの顔そりをしてもらっているところだった。

散髪屋のオニイチャンとなにやら楽しげに話しているゲン。外からはその声は聞こえないけれ
ど、一人前に自分のアタマを指さしたりして、きれいに刈りあがった髪型の出来映えをチェック
しているらしい。

誰かの弟でも、誰かのオニイチャンでもない、一人で世の中を渡っているゲンの横顔。

この子も、いつの間にか「少年」になってるんだな。

秋に地上に落ちたドングリが、腐葉土の中に根を下ろし、ある日突然、若い「木」として姿を現
したような、「一人生え」のたくましさ。

それが「ワリを喰ってる」次男坊ゲンの、何よりの面白さだということに、母は最近、気がつい
た。



「よっしゃあ、おみやげにアイス買って帰ろう。」

いつものお菓子屋で、大箱のアイスを選ぶ。

「コレはアプコの好きなアイス。オニイはきっとコレが好き。」

と言いつつ、ゲンが選んだのは自分の好きな「風船アイス」

ゴム風船の中にアイスを詰め込んだ、あまりお上品ではない駄菓子アイス。

以前に、食べ方を失敗して、水鉄砲のようにアイスをまき散らした曰く付きではないか。

それでも、自分の選んだ物は離さない。

それがゲンの第一信条でもある。




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