月の輪通信 日々の想い
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2003年08月30日(土) 詰め放題

夏休みもおわりだ。
宿題もぼちぼち片付きつつあるので、午後から少し離れたショッピングセンターに出掛ける。
一人500円の大盤振る舞いで、カードだのビーズだの思い思いの買い物を楽しみ、夕食の買い出し。
パック詰めのにぎり寿司をバンバン、カートに入れる。
今日は父さんのおごりだ。
「あれも買っちゃえ。」
精肉売場の特売。
さいころステーキ、パック詰め放題、500円。
ステーキといっても、牛肉の端肉を成形して四角いさいころ状にまとめた、うそっこステーキ。
安っぽいお子さま向けのメニューなのだけれど、うちの子ども達、ことに、オニイはこのインチキステーキが大好き。
ジャジャッと炒めて、たれを絡めるだけのお手軽さだ。

「アユコ、詰め放題だって。君の責任でめいっぱい詰め込むように。」
几帳面なアユコの性格を見込んで任命。
20cm角の透明のケースに、お肉のさいころを一個づつ、規則正しく詰め込んでいく。
「じゃ、頼んだよ。」
とアプコを連れて、別の売場へ。
しばらくしたらアユコが、「オニイと交替してきた。」
「え〜っ、オニイ?」
「横からいろいろ、うるさいから交替したの。」
「ふ〜ん、オニイねぇ・・・。」
別にいいんだけどね。
兄弟の仲で一番、整理整頓の苦手なオニイ。
どうなんだろうなぁ・・・。

果たして、オニイが持ってきた詰め放題さいころステーキ。
ぱっと見ただけでもなんとなく、隙間だらけで、効率よく詰めたとは思えない。
「アユやゲンがグチャグチャうるさいし、他の人が一緒に入れ始めたから、なんか格好悪くて・・・」
馬鹿者、大家族の食卓を満たすのに、格好を構っていられますか。
「ま、いいわ。これがオニイの詰め放題ね。」

「詰め放題」って、微妙にその人の性格見えるよなぁ。
おおざっぱにざっと詰めて、よしとする人。
きっちり詰め方を考えて、何度も詰め直して見る人。
そして、蓋が閉まらないほど積み上げて、どうだとばかり胸を張る人。
他の人が隣で詰め始めると妙に対抗心を燃やす人。そそくさと適当に切り上げる人。
アユコの作業を横から見ていて、
「オレならもっと上手く詰められる」と、交代しながら、なりふり構わず詰め込む大胆さもない。
お人好しで小心者、でもプライドは高いオニイらしい「詰め放題」
ちょっと可笑しかった。



レジのおばさん、さいころステーキのパックにちょっと手元を止める。
「充分、入れていただけました?」
オニイの隙間だらけの「詰め放題」が気になったらしい。
「全権委任した子どもが、これでいいと言うんで・・・」
と、笑いながら弁解。
「もっと詰まりますよねぇ。」
「そうですね、皆さん、結構きっちり、詰め込んでこられますよ。」
「あはは、いいです、これで。」
欲のないことで・・・。
ま、これはこれで面白かった。

几帳面に、きっちり詰め込んで、きっちりフタを閉めるだろうアユコ。
途中で適当に手を抜いて、隣に人が来ると、決まり悪くてそそくさ退散するオニイ。
ゲンなら、適当に山盛り詰め込んで、申し訳程度にフタをのせて、「はい、できた」といいそうだ。
小さいアプコは自分の食べる分だけ入れて、「あとはやっといて・・・」なんて言うかもしれない。

さてさて、人生の詰め放題。
一番たっぷり詰め込んで、充実した日々をつかむのはどの子だろう。
おいしい人生のステーキは、くれぐれもまがい物のインチキステーキではない、本物を味をあじわうように・・・。


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