月の輪通信 日々の想い
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2003年09月12日(金) オンナの子でしょ!


残暑厳しい中、子ども達は毎日、それぞれの運動会の練習でぼろ雑巾のようにくたびれて帰っ
てくる。

完全週休二日制で、練習時間が取りにくくなった分、限られた時間内に集中して練習している
模様。

運動場も教室も例年にない暑さ。

毎日、水筒を空っぽにして帰ってくる子ども達ももちろん、うだる子どもたちを引っ張って動か
す先生方のエネルギーには脱帽。



「高学年の女の子達の言葉使いが汚い。」

最近、どの子だかの懇談で耳にした。

たしかに、我が家の子ども達の周囲でも、「わ、すごい言葉遣い。」

と眉をひそめるような事が多くなった。

自分の事を「オレ」、友達のことを「お前」「てめえ」。

大人のことを「オヤジ」「オバン」。

「キモイ!」「ムカツク!」「死ね、ボケ!」

暑さや疲れで、イライラする体。

稽古事や親の過干渉から来るストレス。

そして、思春期の体の変化による不安や悩み。

また、体力的にも精神的にも、成長の遅い男の子達への優越感も、女の子達の言葉の荒れ
にもつながっているのかもしれない。

どちらにしても、しなやかな若木のようにすらりと初々しい思春期の乙女達の口から発せられ
る口汚い言葉は、汗臭いオッサンの入り口にたった少年達の口から吐き出されるそれより、数
倍の毒気をふくみ、オトナの胸を突き刺す。



オニイやゲンとアユコが口げんかをする。

言葉の乱れに口うるさい親なので、子供らも親の前で汚い言葉を吐くのは御法度とは感じてい
るようだが、それでもケンカが激しくなってくると、抑制も利かなくなる。

「お前が悪いんじゃ、あっちへ、行け!」

日頃クールに「ちっちゃいかあさん」の役目を果たしているアユコですら、怒りモードに入ると
「お前」だの「死ね」だの、毒を含んだ言葉を口にする。

「ちょっと待った、今のことばづかいは何?」

普段兄弟ゲンカには介入しない私も止めに入る。

「それが女の子の使ってもいい言葉?いつもそんな言葉使ってるの?」

「ごめんなさい」

優等生のアユコはたいがい、不満そうなふくれっ面をみせながら、改める。

同じ言葉をオニイやゲンが使っても、アユコが使うほどには気にならない。

「ふんふん、生意気な口を利くようになったな。」と思うだけの事もある。

これって性差別かしらんとわずかな棘が胸に残る。

「何で私だけ・・・」

アユコの胸に残る棘は母のそれより痛いはずだ。



小学校では、男女の名前が入り交じった「混合名簿」を使い始めた。

中学へ行けば技術科も家庭科も男女一緒の授業。

「家事育児はオンナの仕事」と言ってはいけないそうだ。

スカートをはく女の子がぐんと減り、「家を継ぐ男の子」より、「気軽に老後を頼める女の子」の
誕生が望まれるようになった。

男女平等、機会均等と言いながら、それでも私はアユコが使う「お前」が耳に障る。

「オンナの子だから」と区別するのはどうかとも思うけど、それでも近頃私はあえて、「女の子で
しょ!」と叱る。

母として、同性として、女の子の雑言は聞きたくない。それが未成年の我が子である以上、「お
かあさんは、イヤなの」ともはや感覚的な嫌悪だけで娘を叱る。

生意気盛りのアユコには母の理不尽に対する怒りが沸々と沸いてくるであろう事は、察しもつく
けれど・・・。



つい最近、アユコと二人で、ちょうどおなじくらいの年齢の女の子達が、目上の人に向かって生
意気な口を利いたり汚い言葉を吐いたりしている場面に居合わせた。

「おかあさん、あれが自分ちの子だったら、人前でもガンガン叱るだろうね。」

同じ場面を第三者の目で眺めていたアユコも頷いた。

「アタシもそう思った。あの子達のおかあさんは、叱らないのかな。」

「友達同士の時と親に話す時は違うから、気付いてないのかもしれないね。」

それに思春期の女の子達はそれでなくても扱い難いものだから・・・。



でも、まだまだ親が感覚的な好き嫌いで「女の子でしょ!」と叱っても、心のどこかに「ごめんな
さい」がなんとか引っかかってくれる今の年頃。

「こんな風に育って欲しい」「こんな事はして欲しくない」という親の許容範囲を娘達にまっすぐ示
すことの出来る最後の時期かもしれない。

だから私はアユコに口うるさく叱る。

「友達同士でつかう言葉と親や先生に話す言葉は違う。

男の子が使っていい言葉と女の子が使って気持ちのよい言葉は違う。

古くさいと言われようと、性差別といわれようと、母がイヤな言葉は、娘に使って欲しくない。」



今はふんふんと殊勝な顔をしてうなずいているアユコ。

それでもごくごくたまに、気むずかしいふくれっ面や、不機嫌なため息が漏れるのを見かけるよ
うになった。

女の子の成長の微妙な第二段階は近いようだ。

スポーツタイプのブラジャーが気になりだしたアユコの小さな胸の中に、どんな激しい自我が萌
えだしてくるのだろう。

楽しみなような、こわいような・・・・。

育児の不安や心配の種はまだまだ尽きないのである。








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