月の輪通信 日々の想い
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2003年09月19日(金) 2003年9月19日(金) ゲンを忘れた!!

「かわれるものなら、かわってやりたい」

と、昨日、アプコの発熱にめずらしく「親心」をもらしたオニイが律儀に熱を出した。

風邪らしい。



オニイが剣道の稽古を休むことにしたので、私がゲンだけを道場へ送る。

その足で、私は子供会のお祭りの打ち合わせに・・・。

ゲンの帰りの迎えは父さんに頼んで来た・・・つもりだった。



打ち合わせを終え、9時過ぎに帰宅。

居間で、どれ〜んと寝ているオニイを起こし、パジャマでうろちょろしている女の子達に早く寝
間へ行くよう、追い立てる。

二階から、ぼ〜っと寝ぼけた顔の父さんがいれかわりに降りてくる。

「なんかお疲れさんの顔だねぇ。今日は仕事、はかどった?」

と話していると電話が鳴った。

また、お呼び出しかな・・・と電話を取る。

「あ、あのー、ぼく・・・。」

はぁ?

だ、だれ?

ゲンの声。

え?ゲンの声?

「むかえに・・・きてくれる?」

うぎゃぁ!!

父さん!ゲンを迎えてくれたんじゃなかったの??!

「す、すぐ、いくよ。ご免ご免」

アタマの中真っ白のまま、とうさん、血相変えて飛び出していった。

な、なんと、父も母もゲンの存在をすっかり忘れていたのだ!!



ホームアローンという映画があった。

大家族の一員、いたずらっ子の坊やが、どうしたことか家族全員から存在を忘れられ、置き去
りにされちゃうお話。

いくら人数が多いからって、親があんなにすっぱり子どもの一人を置き忘れるなんてありえない
よねと思っていた。

置いてきぼりになっても妙にたくましく、しょげ返ったりしない主人公に「ちょっとかわいげないか
も・・・」と思ったりもした。

「子沢山」のおうちは人数確認もおおざっぱといわれているようで、ちょっとむっとした。

それなのに、それなのに・・・。



ゲンは自分の稽古が終わったのに、大人達の稽古が終わるまで、1時間、道場で待っていた
ようだ。大人も帰る時間になってようやくお友達のおうちから電話させてもらったらしい。

「ごめんよ、ゲン。悪かったね。」

ほんと、やんなっちゃうね。

さぞかししょげ返って、べそを掻いて帰ってくるかとおもったら、車から降りてきたゲンは意外
や、にこにこ笑っている。

帰りに「お詫びの印」にコンビニのチキンを一人ぶんだけ買ってもらったゲンは、汗まみれの剣
道着のまま、かぶりついて、満足そうだ。

「いやぁ、ホントに悪かった。おかあさんが迎えて帰ってきたと思ってたよ。」

皆からさんざんに責められて、しょげ返ってしまったのは父さんの方だった。



実のところ、父さんが、大事な息子の迎えを忘れて、ねむりこけてしまったのは、ここ数日、作
品の出来映えについて、考えることがいっぱいあるからだ。

やらなければならない仕事や、今ひとつ作品の出来に満足がいかないとき、父さんは心ここに
あらずという状況に陥る。

必ずしも仕事場にこもりっきりというのでもなくて、日常の雑事の合間にも頭の隅に作品のこと
が引っかかっている。

頼んでいた園バスのお迎えをすっぽかして、園から電話がかかってくるなんて事も何度かあっ
た。

あわてて園まで迎えに行くとベソをかいてしゅんとなった可哀想な我が子。

なんかこっちまで、胸がきゅんとなってしまったものだった。



さすがに3年生ともなると、迎えに来てもらえなかったくらいでベソをかくこともなくなったか・・・。

「アンタ、自分ちの電話番号もわかんなかったの?」

「えへへへ・・・・」

コンビニチキンを平らげたゲンはどこまでも明るい。

考えてみれば、紙飛行機だとか虫取りだとか夢中になるとご飯も忘れてしまう熱中型のゲン。

大事な息子の存在すらきれいに忘れてしまう芸術家の情熱を一番理解できるのは、ねちねち
うるさく問いつめる妻ではなく、「えへへ・・・」と笑って、あっさり許してくれるゲンカもしれない。



4人兄弟の3番目。

一人目ほどのドキドキハラハラも、4人目ほどのカワイイカワイイもなくて、もしかしたら一番、
割りを喰っている次男坊。

「放っておいても、大丈夫」と思わせながら、時々、でっかいビックリで、皆の注目を引く。

あっけらかんとしているのに、その実、ナイーブ。

面白いやつだなぁ。

ごめんな、ゲン。

アンタは大事な息子だよ。


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