月の輪通信 日々の想い
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オニイ、中学での初めての運動会。
小学校とは違い、親子でお弁当と言うこともないのでちょっと気を抜いて観戦。
小学校の時はだんとつちびっ子の男の子を捜せばオニイが見つかったが、今日はオニイの出 番をついつい見失いがち。少し背が伸びて、「普通サイズ」にまぎれこんだ為らしい。そういえ ば徒競走も、ダントツびりではなく、2位と競り合う、3位だった(4人中)。
ところで、お赤飯を炊いた。
先日、レギュラー入りした一升炊きの炊飯器で思いの外うまく炊けたので、蒸し器を使うおこわ より手軽で良いかもしれない。
玄関の南天を切ってきて、折り箱に添えておばあちゃんちへお裾分け。
「難を転ずる」の意味をアユコに教えながら・・・。
昨日、アユコが女の子になった。
「おかあさん、ちょっと話があるんだけど・・・」
まだまだ、胸もぺったんこ。小枝のようにやせっぽちのアユコにこんなに早くその日が来るとは 思っていなかったので、「え?」と間抜けな返事をしてしまった母であった。
前もって準備はしてあったので、処理の仕方やら体調の事やら、男の子たちに聞こえないよう にひそひそと教える。
「めんどくさいけど、大事なことだからね。これからおばあさんになるまで、上手におつきあいし ていこうね。」
男の子達にも、さらりと性教育はしてあるので、オニイもゲンも女の子の体の変化については 知っているはず。
だからひそひそ話す必要はないのだけれど、ついつい人払いをしてから話をする私。
「性の知識は男の子にもオープンに・・・」と言いながら、この秘やかさは何だろう。
女の生理を「恥ずかしいこと」「穢れたこと」と思う気持ちはかけらもないが、なんとなく「生理」と いう言葉そのものを口にすることにすら、憚りを感じて「アレ」とか、「お客さん」とか隠語を使っ てしまう。
おそらく私は男性の上司に「生理休暇を下さい」とは面と向かって言えないタイプだろう。
「おかあさんも5年生で始まったよ。学生の時は生理痛がひどくて、大変だった。子どもを何人 も産んだら、嘘みたいに治っちゃったけどね。」
お台所で、アユコと秘やかな会話を交わしているとき、ほのかに沸いてくるこの暖かい感情は 何だろう。
新しく「女」という領域に踏み込んで来た後輩への親愛だろうか。
「親と子」ではなく、「女同士」の会話が出来るようになった娘の成長の喜びだろうか。
ためらいながらも自分の体の変化を受け入れていこうとしているアユコへのエールだろうか。
どちらにしても、人払いして話をするのは、「オンナ」と言う秘密を共有する同志愛であって、タ ブーとか恥じらいとかネガティブな動機によるものではない気がする。
気になって、今日、オニイにアユコのことをちょっと耳打ちしておいた。
「君はもう知識としては知っていると思うけど、実は昨日アユコが女の子になった。まだアユコ は幼いから慣れるまで、具合が悪かったり失敗したりするかもしれない。でも兄として君は気付 かない振りをしながら、見守ってやって欲しい。」
「うん、わかったよ。」
力強く頷くオニイは、すっかり頼もしいオトコの顔。
「気分的にもうっとうしいものだから、気をつけてやってね。」
さっき、アユコとささやかな事で口げんかしかかっていたオニイ。
「あ、そっか。イライラしてるのもそのせいか。」
・・・・ちょっとまて。
その言い方は一つ間違えたらセクハラものだ。もちろん今のオニイには全く悪意はないのだけ れど。
その辺のところは、これから男の子達にもゆっくり教えていかなければ・・・と思いつつ、今日の ところは、
「初めてのことでデリケートになってるからね。」
とお茶を濁しておいた。
「・・・で、ゲンに説明するのは面倒なので、今日のお赤飯は、オニイの運動会祝いということ で・・・。」
とオニイに深く追求しないように釘を差しておく。
乳歯が抜ける子。
生えてきた子。
始まった子。
上下の年齢差8才の4人兄弟は、日々、成長中。
本当は毎日がお赤飯。
明日はどんなビックリがころがりこんでくるのだろう。
・・・と、近頃では体重以外はちっとも成長しなくなった母は、また赤飯をつまむ。
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