月の輪通信 日々の想い
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2003年10月03日(金) 米泥棒

いつも来てくれる生協のお兄さんが、「再来週から米が値上がりします。」と教えてくれた。だからって、そうそう買い置きができるものではない。天候不順で不作だと言うことだし、農家の人たちとの痛み分けと言うことで少々の出費は仕方がないか・・・

あちこちで「米泥棒」のニュースを聞く。
サクランボや梨、椎茸など他の農作物の盗難被害も続いていたけれど、その対象が収穫したばかりの米ときくと、余計に心が騒ぐ。

ニュースを見ていて思ったのだが、被害に遭ってインタビューに答えている生産者の方は驚くほど高齢の方が多い。
80歳過ぎのおじいさんが「どないもこないも、しゃあないですわ。」とへたりこんでいらっしゃるのをみて、アユコが怒る。
「許されへんなぁ、一年間、苦労して育てた米やのに・・・」

アユコは今年、授業の一環で米作りを体験させてもらっている。
広い校庭に小さな田圃を作ろうと、整地して、近所で分
家のベランダでも、余った苗をもらってきてペットボトルで育てている。
ひ弱なペットボトル苗は、近所の田圃の稲の半分ほどの背丈。それでも稲穂がみのり、少しづつ頭を垂れ始めると、収穫の日が楽しみだ。

こんなに大事に育てた稲でも、その一本の稲穂から取れる米粒の量はごくわずか。
いつもぱくぱく食べるおにぎり一個分の米を収穫するには、どのくらいの稲穂がいるのだろう。

そんなことを、ダイレクトに目と手で確認する経験は、小学生にとって貴重な宝となるだろう。



そんなアユコだから、米泥棒のニュースはことさらに幼い胸に刺さるのだろう。
「何でそんなことする人がいるんだろう。」
正義感あふれる小学生に説明できない、大人達の犯罪の愚かさ。
盗まれた米は、価格に換算すれば数十万円。
一年間の農作業の成果がわずか数十何円ということにも心が痛むが、たったそれだけの利益のために、収穫したばかりの米を盗みの対象に選ぶのも腹立たしい。
他に盗むものはないんかい!と怒りは妙な方へ向かってしまう。



実家から、大粒のブドウの荷物が3箱も届いた。ブドウを栽培している親類からの発送だ。
宝石の様に輝くみずみずしいブドウの粒は、生産者の人たちの一年間の汗の結晶だ。
ブドウ畑でたわわに実る果実とそれを収穫する農家の人の汗を思うとき、その果実の甘さはまさに「甘露」となる。

目の前のある物の裏側に、作物を育てる人、物をつくる人の労苦や想いを感じることの出来る力。
そんな「思いやる心」は、「経験すること」「知ること」から生まれてくる。


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