月の輪通信 日々の想い
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寒い。
おまけに雨。
傘を差して、自転車をすっ飛ばして登校するオニイ。
長靴で水たまりを選んで歩くゲン。
体裁を気にして、決して長靴は履こうとしないアユコ。
そして、お車登園を拒否して、レインコートを着たがるアプコ。
・・・・誰か一人でも、母の勧める雨支度に従ってくれない?
台所のガスストーブを出した。
寒さ対策ではない。
このところの雨続きで洗濯物が全然乾かないのだ。
土曜日に洗濯したオニイの剣道着もまだ湿ったまま部屋干しになっている。バスタオルもパリ ッと乾く暇がないので、うっとおしい。体操服だの制服のセーターだの、一晩で乾いてもらわな いと困るものが次々現れる。
本来なら12月の声を聞くまでは暖房器具には頼らないでやせ我慢するのが我が家の家訓な のだが、ことしは随分掟破りだ。
毎年、台所に置く大型のガスストーブは、結婚の時、神戸の叔母から御祝いにと頂いたもの。
一台で、キッチンとダイニングが一度にほんのり暖まる強力タイプ。
ちょっとしたやかんやお鍋もかけておけるので、お湯を沸かしたり、夕食の汁物の保温に使っ たりと大活躍してくれる。
凍えるように寒い朝には、どこよりも先にこのストーブに火を入れる。
2階から降りてきた子ども達が先を争ってストーブの前を陣取り、ストーブガードの前についた てのように並ぶ。
我が家の暖房の主役はこのガスストーブと居間に拡げるコタツ。
今年はさすがに子ども部屋にホットカーペットを敷いてみたが、基本的には2階にはほとんど 火の気がない。
だから寒くなってくると、子ども達は居間か台所に群れて来る。
「ぬくもりを求めて集まってくる」という感じが心地よい。
新婚の家庭に大型ストーブを贈ってくれた叔父叔母は、十年あまり先の家族の集うぬくもりの 場まで一緒に贈ってくれた事になる。
実は同じ型のストーブが実家の台所にも置いてある。
両親が新婚家庭のストーブの便利さに惹かれて、購入したものだ。
今年、祖母を見送って二人家族になった台所でも、同じストーブのぬくもりに父母が集う。
子ども達がそれぞれ巣立って、父が定年を迎えて、家族の形が変わっていく実家でもガスの火 の柔らかな暖かさが、夫婦の冬を包むのだろうか。
今年も、台所のストーブに入れ替わり立ち替わりやってきて、ふざけあい、おしゃべりをし、暖 かいミルクを飲む子ども達。
この子等が自分の部屋にコーヒーを持ち込んで散っていき、子どもだけの世界に閉じこもって いく日も近いだろう。
そして、いつかまた、夫婦二人で一つのストーブぬくもりを分け合う日がやってくる。
お互いに、健やかに穏やかに、その日が迎えられますように。
一年ぶりにストーブに点火する。
わずかなほこりの焦げる匂いが消えると、肌寒い部屋に暖かい空気が満ちてくる。
とりあえず、生乾きの洗濯物を順々に拡げてみる。
一番乾きにくい子ども達のジーンズ。
随分、丈が長くなった。
帰宅した子供らに、この秋始めてのホットミルク。
懐かしいぬくもりが、確かに今、この家にある。
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