月の輪通信 日々の想い
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2003年11月20日(木) 本物に触れてね


子ども達の小学校の5年生が工房の見学にやってくる。

子ども達がやってくるのは9時過ぎ。

アプコの園バスの時間が9時半だ。

かち合っちゃったよ、どうしようと思っていたら、「喉がしんどいからお休みしたい」と言うアプコ。

ありゃりゃ、おやすみかい・・・と思っていたら、今度は風邪気味のオニイが、「しんどい、休もう
かな。」

いつもなら、「何を言う、行って来い」と無理にも登校させる所だが、「ラッキー!子守要員確
保!」とばかり、二人まとめて休ませてしまった。

これって、どうよ?



毎年5年生対象に、父さんが指導に行っている陶芸教室。

今年はちょうど家のアユコの学年と言うこともあり、制作の前に工房の方の見学にも来ていた
だくことになった。

3クラス80名あまりの5年生が、狭い工房の中を交代で見学して回る。

義兄や義父も巻き込んでの大がかりな見学ツアーとなった。



茶道も、お抹茶の味も知らない子ども達に、うちのやきものの概要や簡単な茶道の話をし、工
房内に展示してある作品を見てもらい、作業場を説明して回る。そして最後に、お茶室の見
学。

普段展示会などに出している高価なお茶道具や制作途中の作品等も、そのままの状態で子ど
も達の手の届く所で見てもらった。

子ども達は、値札のゼロの数を数えたり、おそるおそる手を伸ばしたり・・・。

付き添いの先生達の方が、「触るな!壊すな!」と戦々恐々としておられるのが可笑しかった、



「うわぁ、一、十、百、千、万。ひゃくごじゅうまん!」

子ども達の為にと、この朝、展示台に置いてもらった亀の食籠。

窯元の名の由来となった代表作。

子ども達は、すぐ手元に置いてある美しい緑の作品と値札を繰り返し、見比べる。

「おばちゃん、ほんまに買う人おるのん?」

と、正直にきく子もいる。

「これ!なんということを!」

と、そばにいらした先生が恐縮しておられる。

「おるよ。買う人がいてくれはるから、おばちゃん達はご飯がたべられるのよ。」

と、冗談めかして言う。

お茶道具の値段は、確かに日常の金銭感覚とは大きくかけ離れたところもあって、大人のお
客様でも似たような疑問を口にされる方もある。

一塊の土塊から、人の手が作り出した作品が、高価で大切なお道具として扱われるために
は、伝統の技術や、作家や職人の日々の営みの積み重ねが要る。

その事を、高価な値札のついた美しいお茶道具の一つ一つから、子ども達が少しでも感じ取っ
てくれるといいなと思う。



来週、この子ども達は、一人ずつ粘土の塊を前にして、生まれて始めての抹茶茶わん作りに
取り組む。

世界に二つとない自分だけのお茶碗は、高価な展示台の上の作品にも匹敵する大事なお茶
碗になることだろう。


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