月の輪通信 日々の想い
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米櫃の米が少なくなった。 「そろそろ行ってこなくちゃね。」 台所の隅に積んであった米袋の玄米を精米に出かける。
玄米は昨年の秋、新米の季節に届いた郷里の米。 力自慢の息子達がよっこらしょと運んでくれた30kgの米袋は、ヤワなおばさんの梃子には合わず、うんともすんとも持ち上がらない。 別の空の米袋を出してきて中身を二つに小分けにし、軽自動車の後にズドンズドンと積み込んで近所のコイン精米機に持ち込む。
農協の前の精米機には若い夫婦らしい先客が居た。 正月あけのこの時期、気のせいか精米所にやってくる人の数が普段より多い。 二人はどうやら玄米を精米するのが初めてらしく、慣れぬ機械を前に戸惑っている様子だったので、横からおせっかいを焼いて精米ボタンの選び方を教えた。 二人が抱えてきたのは、真新しい10kgの米袋。 お正月の帰省でどちらかの実家で頂いてきたものなのだろうか。 精米機からサラサラと流れ落ちる白米を物珍しげに喜ぶ様が初々しい。 若い夫婦世帯なら10キロの米で1ヶ月くらいは足りるのだったっけ? 「1ヶ月30kg時代」に突入の飯炊き母ちゃんは、若いご主人が片手でひょいと抱えていく10�圓諒涜泙魃鵑ぬ椶埜�送る。
そういえば、この精米の仕事。 少し前までは、父さんに「そろそろね。」とお願いしての二人がかりの作業だった。「ずっしり重い米袋を抱えると、家族の重さを実感するね」と父さんはいつも笑って二つ分の米袋を担いでくれた。 最近は工房の仕事も忙しくなり、父さんの手を煩わすに忍びなくて、私が一人で精米に出かけてくることが増えた。 何かの折、そのことを実家の母に話したら、「あらまぁ、それはそれは」と妙に感心された。娘が逞しく主婦業をこなしている様を感じていただけたか。
精米機から、白く精米された米がサラサラとこぼれ落ち始めると、香ばしいぬかの匂いが漂ってくる。 再び二つの米袋を満たすたっぷりの白米。 精米したての白米はほんのりと暖かい。 ずっしり重い米袋を抱き上げると、幼い子を抱き上げたときのような心地よいぬくもりが腕に伝わってくる。 故郷の米の暖かな重さを、幸せな思いで車に詰め込む。
私と入れ替わりに精米所の前に軽トラックが停まった。 降りてきたのは割烹着姿の年配の女性。 助手席には、さらに高齢らしい白髪の老婆が小さく背中を丸めて座っているのが見えた。 年老いたお姑さんを伴って精米しに来た主婦だろうか。 軽トラックの荷台から、小分けにした米袋をよっこらしょと運びこむご婦人のために、一度閉めかけた精米機のドアを大きく開いて「お先にどうも」の小さな会釈。 逞しくも心優しい主婦の大先輩に、精一杯の敬意を表して。
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