『今日の一言』
因幡うたぎ



 嫌な予感は良く当たる・・・

ずっと楽しみにしていたネズミ王国に行って、帰ってきたら、最愛のネコが死んでいた。−−−朝、出かける前に、水をスポイトで飲ませたら、ほとんど飲み込むことも出来なかったので、多分今日、出掛けたら、生きている姿には逢えないかもしれない…そう思いながらも、外出を選んだのは自分だった。
帰ってきて、冷たくなった彼女を見た時、「ああ、やっぱりな」と思った。
玄関を開けた時、線香の匂いと、菊の香りが強く立ちこめていたから、彼女の冷たくなった姿を見る前に、気付いていたけど、自分の家には既に仏壇があるから、そちらの方の線香の匂いだと、信じたくて…すぐには仏間の方に行けなかった。−−−無事な姿を探して、結局、箱の中の彼女を見た時、納得している自分と、後悔している自分と、やるせない自分とがぐちゃぐちゃになって…一人で逝かせてゴメンネ。傍にいなくて、ゴメンネとしか言えなかった。ネコは人のいる所では死なない…というけれど、母も私もいない午前中に、一人で静かに眠っていた彼女は、最期に何をおもっただろう?−−−淋しいと、思ってくれただろうか?それとも、夢を見ながら、一人であることに気付かないうちに、逝ってしまっただろうか?朝、寝かしつけたままの姿で、眠るように、苦しんだ様子もなく冷たくなっていたよ…と母は言った。
ごめんね。今日、多分彼女は死ぬだろうと解っていたのに、もう時間が残っていないだろうと解っていたのに、出かけて…一人にして、ごめんね。
ゴメンネ……ごめんね……。ごめん。ごめんなさい。

2002年09月10日(火)
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