優しい=青い部屋=あたしとmasayaの日々。

2002年03月25日(月) 月曜日/花冷え『気ヲツケテ、マタネ。』

月曜日。
今日本当にmasayaは行ってしまう。

なんだかまだ信じられなくて。

朝起きてメールを入れる。おはやう。
すぐに帰って来る。おはやう。

支度をして、車に乗り込んだ。
途中の桜並木はもうすぐ満開。
天気予報は晴れだが、風は冷たい。

花冷え。だろうか?

駐車場に着くと、masayaの車がない。
不安になってメールを入れる。

出動したの?

家の前に置いてるんだよ。

車を置いて、通い慣れた道をテクテクと歩く。
駐車場前のコンビニ。



masayaのいきつけの煙草屋。

歩道橋の下を右に曲って、住宅地に入る。



築何年経つんだろうか?
今どき珍しい文化住宅。
一階の端から2番目。102号室。
一番奥は真っ青な砂壁の=青い部屋=


見なれた車が停まっている。
ドアは開け放たれていて、入ると荷物が積み上げられていて
何もない部屋で、masayaがいつもの笑顔で迎えてくれた。

午前中はガスと電気と水道の閉栓が来るんだよ。
そか。

肌寒い中を歩いて来たので、手が冷たかった。
抱き着いて、masayaのTシャツの中に両手を入れる。

やめてくれよぉ。人でなしかぁ?人間としてどうかと思うぞぉ。冷たいっ!

いいぢゃん。冷たいんだもん。あったかいよう。

ゆうちゃんはあったかくても俺は冷たいぞぉ。

いいぢゃん。


そうやって、少しの間じゃれあった。
もうこんなふうにじゃれることもできない。だからいいぢゃない。

ガスと電気の清算をして、masayaは買い物に行くという。
まだ水道料金の清算が来ていないので、あたしは留守番をすることにした。
何もない青い部屋。




ガランとして、広くて、壁だけが真っ青で。
masayaの青い毛布に包まって、天井を見上げて、
少し泣きそうになった。

バタバタと忙しく午前中を過ごして、
昼食は、今まで行けなかった店で、行きたかった店で
中華料理を食べて、口許にごはんつぶをつけるmasayaを見て、あたしは笑う。

子供みたいだよ。masayaくん。


部屋に戻るとやっぱり寒くて、
少しだけ陽の差す窓際に並んで座った。




もう、行っちゃうんだね。ほんとに行っちゃうんだよね。

あい。

淋しいよぉ。


抑えていた涙が少し溢れる。抱き着いて、そのまま少し泣いた。
masayaはあたしを抱き締めて、背中を撫でて、何度もキスをした。




大丈夫か?

…大丈夫なんかじゃない。


そう言って、また少し泣いた。


何もない部屋で、
一枚の青い毛布だけで
時間がないあたしたちは
服も着たままで、慌ただしく抱き合った。

masayaの躯。
重み。背中の感触。
首筋。唇。抱き締める腕。
明日からはもうここにいないと思うとたまらく辛い。
慌ただしいセックス。

抱き合う事で淋しさが埋まるわけではないが
あたしは抱かれたかった。
何度かあたしはキモチイイと呟いて
masayaも同じ言葉を囁いて
ひときわ動きが激しくなって、彼はあたしにもう我慢できないと伝える。

モウ、イクヨ…。
イチバンオクデ…オネガイ。
彼の痙攣を受け止めて
彼の体液を受け止めて
あたしは果てる。快感。

短い抱擁の後、またあたしたちは何ごともなかったかのように
引っ越しの準備を始めた。

荷物を運んで、あたしはもう帰らないとイケナイ時間。
別れを惜しむ暇もないほど、忙しく時間は過ぎて行った。

「後で必ず寄るから。」

masayaはそう言う。



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夕方になっても連絡はない。

もしかして、もう行ってしまったんじゃないかと
別れの言葉も伝えないままに勝手に出発してしまったのかと
不安になってメールを入れた。


まだいる?

いるにはいます。終わらないよ。


何が終わらないのかわからないまま。
あたしはただ待つ。
しばらくするとそうmasayaからメールが入る。

今から持って行ってもいい?



ちょうど、あたしは出れない時間帯で
レスを返す事もままならず、そのまま15分程が過ぎた。


もう時間がない。ていうか、来てるんだ。

どこ?

近くまで。


もう近所まで来てるらしい。
近くのコンビニまで来て貰って、あたしは口実を見つけて一瞬だけ外に出て、
荷物をいっぱい積んだmasayaの車に駆け寄る。


ごめんね。

いへいへ。はい、ゆうちゃんに渡す物。


彼が持って来たのは、粘着ロールの掃除道具とお茶の缶と
masayaの名義のガソリンスタンドのカード。
苦笑してしまう。


ありがとう。

いへいへ。


車のドアを開けて、一瞬のキス。
軽くあたしの頭を撫でて、masayaは言う。


ちゃんと連絡するから。ひとでなしじゃないぞ。

うん。ありがとう。気をつけて。

いつものように、
普段と全く変わりなく、masayaはじゃあと手を上げて
車を発進させた。





本当に、別れを惜しむ暇もなくて
涙を流す暇もなくて
あっと言う間の出来事だった。


家に戻って、メールを送る。言いたかったこと。
いつも言いたくても言わなかったこと。



masayaくん。ありがとう。
言い忘れた。大好き。



ありがと。
俺も好きだから嬉しいぞ。



最後まで騙されどおしだったよ。泣。
ひとでなしにならないでね。約束。



あい。そうします。


最後のメールも
いつもと全く同じようなテキトー言葉だった。






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