優しい=青い部屋=あたしとmasayaの日々。

2003年11月14日(金) 24時間

仕事が終わる時間は午後6時過ぎ。
そこから新大阪へ移動して、あたしはひかりに乗る。

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逢いに行く事を決めたのは今週の初めだった。
先週末に彼のPCのアドレス宛にメールを送り、その返事も貰えないまま、あたしは電話をかけた。

「今週の土曜日は暇ですか?」

「暇ではないがお休みだよ。」

「逢いに行ったら逢えますか?」

「逢えると思ふよ。」

「じゃぁ行く。」


急に思いついた事だった。たまたま今週は水木と2連休で、また土曜日が休みという月締めの調整期だったので、3日も休みがあるなら動けるんじゃないかと思ったから。

今の仕事じゃ土日の連休は難しい。
土日に休めないとなれば、日帰りするしかない。
土曜日1日で往復6時間もの移動は少しキツイなと思っていた。


逢いに行く事を決めてから、ネットの乗り換え案内で検索する。
なるべく短い時間で、なるべく乗り換えがなくて、そして、当日中に彼の住む町に到着する列車。

午後7時台の1本。

なんど検索してもその1本しかみつからなかった。


当日のシフトを確認すると遅番で午後8時過ぎの終了。
それでは絶対に無理。
店のスタッフにメールを入れてシフトを交代してくれるように御願いする。

彼女は快くシフトチェンジしてくれた。
これで、間に合う…。



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最寄り駅までのバスの時間がわからない。
午後6時半。イライラとして、あたしはバスを待つ。
やっと来た1台に飛び乗って、最寄り駅まで。
午後7時。
ここから新大阪までは一本だ。間に合う。

新大阪到着午後7時20分。



金曜日の新大阪はスーツを着た男の人たちでいっぱいだった。
券売機の前に列が出来ている。
空いていれば自由席でと思っていたが、この状況を見ると自由席は並んでも座れない確率が高い。指定席で行く事にして、切符を買う。


駅構内のハンバーガーショップで軽く夕食を取り、売店で雑誌を買って
ペットボトルのお茶とタバコを買う。

新幹線の禁煙席は煙っていてあまり好きではないけど
ひとりの時は荷物を置いたままタバコを吸いに行く事も出来ない。
だから喫煙車。

乗り込んだ車内は煙っている。
でもすぐになれるだろう。
髪と服にタバコの匂いが着くのが嫌だけど。


彼がタバコを吸う人で良かったと思った。





逢うのは1ヶ月と10日ぶり。



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金曜日の新幹線はネクタイを締めた会社員でいっぱいだった。

車掌に切符を見せるともうすることはない。

買ってきた雑誌をぱらぱらとめくって、ペットボトルのお茶を一口飲んで
タバコに火を点ける。

ふぅ…。

やっと間に合ったという気持ちが大きかった。


タバコを消して少し眠ろうかと思ったが、隣の男性二人組のおしゃべりがうるさくて、気になって眠れない。そして、あたしはまたタバコに火を点ける。


ああ。メールを入れておかなくちゃ。



到着時間を記したメールを彼に送る。
当然返事は帰ってこない。まだ仕事中の筈だ。

逢いに行く事を決めてからも、ほとんどメールでの連絡はない。
最近はこの状態にも慣れて来た。


夏の終わり頃から、滅多にメールをくれなくなった彼に対して、あたしは長いメールを送った。

「どうしてなの?何があったの?何か考えがあってそうすてるの?あたしが悪いの?」

それに対する彼の答えは簡潔だった。

「別に何も考えていません。会社に行くだけで精一杯だよ。」


そう言うのがわからなかった。
会社に行ってても一通くらいは返事出来るじゃない?いつもそう思ってた。
でも、自分が仕事を始めて、同じ状況になると考えがかわった。

本当に、メール一通打つのも面倒な時がある。

これは誰に対しても。
そういう状況に自分がなってみて、やっとなんとなくわかった気がした。



逢いに行くよと行ってからも、そのことについての連絡もなにもない。
もちろん、あたしも到着時間を一度入れただけだ。
だから、もう一度確認の為に、メールを入れた。




結局、車内では一睡も出来なかった。
そして、到着。
前に来たのは、今年の2月の温泉の帰りのことだ。ここで降りるのは2度目。
1度目は去年のお盆。あたしが家出をして来た時のこと。


午後10時半を回っても、まだ連絡はない。
外が寒そうだったので、そのまま新幹線の待合室で時間をつぶす。
NHKのニュースの音を聴きながら、少し目を閉じてみた。
ああ、そだ知らせておかないと。


「着きました。」

そうメールを送った。相変わらず返事はない。



もし、彼が来なかったら、あたしはどうするんだろう?
そんなことを思って、電光掲示板に目をやると、もう新大阪まで走る新幹線はない。
どっちにしろ、帰ることは出来ない。

連絡がないと言う事は来るという事だろう。
勝手にそう思って、最終1本前の新幹線が出るまで、あたしはそこに居た。
時刻は午後11時。

そろそろ動きますか。


バッグを持ってあたしは改札へ向かった。


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1年と少しの間に、駅舎が様変わりをしていてびっくりする。
違う、2月にここから乗った時も、まだこんなじゃなかった。

モダンなデザインの屋根と、乗り継ぎの私鉄のホームも以前と違って見違える程綺麗になっていた。



夜11時になると、駅前と言っても静かなものだ。
営業しているのは、大手のチェーン店の居酒屋ばかり。
アルコールを飲まないあたしは途方に暮れる。

少し歩くと、ファミリー中華レストラン。
うちの近くにもあるチェーン店だ。ここならお酒を飲まなくても午前2時まで営業してるし。彼が何時に来るのかわからないので、しらずしらずの間に、営業時間が長い店を探していた。

外は寒かったので、中に入ると暖かい。
ドリンクバーと少しの食べ物だけを頼んで、あたしはまた雑誌に目を落とす。


携帯が鞄の中で鳴ってる。
見ると彼だった。

「今終わりました。今から帰るとこだよ。」

「お疲れ様です。」

「で、どこだ?」

「○○駅前の中華料理店」

「ああ、そこか。わかった。」

「小腹が空いたので、今から少し食べます。」

「そかそか。小腹か。良いなぁ。俺はものすごく腹が減ってるよ。」

「じゃぁ。待ってる。」

「そかそか。」



やっと連絡が取れた。
忘れていたわけでもない。
当初から遅くなるとは言ってたけど、実際にここまで遅くなるとはあたしも思っていなかった。

ウーロン茶を飲んで、少しつまんで、あたしは待つ。
11半を過ぎてもまだ来ない。
12時前、また携帯が鳴る。

「ほとんど着きましたが。」

「店出たら良い?」

「出てくれたまへ。」


会計を済ませて、店の外に出る。
見回すと、少し先に見覚えのある車がハザードを点灯させて停まっていた。
なぜか小走りになってしまう。

ドアを開けると、いつもの彼だった。

「こんばんわ。」

「こんばんわぁー。腹が減ったよ。」



相変わらずだ。久しぶりも何も言わない。
普通に会話がはじまる。


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助手席の足下の荷物を後部座席へ移動させてあたしは座る。

「ねへ。食べたの?」

「食べてなひよ。ああ、もう腹が減ったよ。」

「そか。じゃぁ晩ご飯だね。」

「あなたは食べたのですね。」

「あい。食べました。」

「それはそうと、泊まる所も探さなきゃいかん。健全な町なので何もないよ。」

「そっかぁ。でも先にご飯でしょ?何が食べたいの?」

「肉だなぁ。」

「こんな夜中に?」


車を走らせるが目的地が定まらない。ファミレスは気分が乗らないので嫌だというし。泊まる場所も探さないとだし。でもあたしはこの辺りの地理には疎いから、相談されてもわからない。

「ああ、そうだ。お誕生日のだよ。買っておいた。」

「ほんとー?うれしぃー。」

助手席の荷物は、あたしのお誕生日のプレゼントだった。
買ってくれてた事に感激。撮るとすぐにプリントされるインスタントカメラ。前から欲しかったので、こないだの電話で「何が欲しいんだぁ?」と聞かれた時に伝えておいたもの。


「そうだ。茅ヶ崎の方にでも行ってみるかぁ?」

有料道路に乗る。どうやら右側は海のようだ。海見える? ん?寄ってあげようか? うん。 見えないだろ。ハハハ。 見えないよ!

何軒もファミレスを通り過ぎる。日付はもう変わってる。チラホラとラブホテルが見えたりもする。ああ、この辺りに泊まればいいや。

「あっ、HOTEL PACIFICだよ!」

「本当だねぇ。」

サザンオールスターズの歌が浮かぶ。でも歌と違ってそこはタダのラブホテルです。ホテルパシフィックを過ぎて、結局、ご飯を食べるところがないので、一本上の道に出る事にした。しばらくはしると、チェーン店のイタリアンなファミレス。
右折して、駐車場に車を停める。
こんなとこに肉はあるんだろうか?

「リブステーキと、カルボナーラと、イタリアンオムレツ。」

「え?そんなに食うの?」

「当たり前だ。普通に食うよ。」


あたしはエスプレッソと生ハムを少し食べる。
テーブルにいっぱいの料理が並んで、とんでもない勢いで彼はそれを食べてゆく。ほんとお腹空いてたんだね。

全部食べ終わって、彼が言った。

「カルボナーラじゃなくて、ご飯にすれば良かったよ。」

タバコを吸って、一息ついて、さて行きますかと、彼が立ち上がった。


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「さて。どこへ行きますか?」

「HOTEL PACIFICへ。」

「あそこまで戻るのか?」

「だってせっかくだし、サザンオールスターズだもの。」


別にどこでも良かったんだけど、何も決めてがないよりは合った方が良い。
来た道を引き返してHOTEL PACIFICへ。

今度は道の左側が海。
でも真っ暗で見えない。もしかしたら部屋から見えるかも?
少しだけ期待してみる。

駐車場に車を入れると、フロントから人が出てきた。

「すいません、こちらが満室ですので、あちらの方へ。」

示された方には、ワンルームワンガレージの昔ながらのモーテル。
これで海は見えなくなった。涙のHOTEL PACIFICのバカ。


「うーん。なんかこう”エコー”ちっくだなぁ。」

前にふたりで【探検】したホテルの名をあげる。
そだねそだね。そんなかんぢ。

別に部屋は狭くもないし、まぁ普通です。
凝った装飾もないし、普通のバスタブに普通のトイレだし。

お誕生日プレゼントを早速開けてみる。箱の表には宅配便の伝票。
今日到着したので、そのまま持ってきたという。

箱を開けると、パールホワイトのボディのカメラが入っていた。
電池を入れて、ファインダーを覗いて、シャッターを押してみる。まだフィルムは入っていない。

フィルムもたくさん一緒に持ってきてくれた。
だから1箱開けて、カメラに装填する。
早速、彼の写真を1枚撮る。
2分ほどで、ほとんどの色が出るらしい。
相変わらず綺麗に写る。この発色と画像の綺麗さで、あたしはこれが欲しかったのです。


気付くとお風呂が溢れてる。ああ、大変止めなきゃ。大あわてで、お湯を止めてそれからお風呂に入る事にする。

いつもそうだけど、サクっとお互い脱いでしまって、えいっとお風呂に入るのです。バスルームの前で、バスタオルが入ってるビニールの袋を破ってると、後ろから彼が胸を触ってきた。でも、そのままお風呂に入るのです。

ぶくぶくと泡風呂にして、一緒に入る。

「気持ち良ひねぇ。」

「さうだねぇ。」

「泡が細かいねへ。」

「さうだねぇ。」

「このままくわえてみたら苦いかなぁ。」

「うーむ。わからん。」

「くわへたひなぁ。」


相変わらず変な会話だと思う。
あたしが顔を洗ってる間、彼はお湯を足している。
化粧を落として、もう一度あたしは湯船に入る。

「くわへてみやふかなぁ。でも苦ひよねぇ。」

「はいはい。わかったよ。じゃあ流してあげやふ。」


そういって、さっとシャワーを浴びて、彼が浴槽の縁に腰掛ける。
躊躇せずにあたしは唇を近づける。

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「…ふぅ。のぼせます。後は上がってからぁー。」

「そかぁ。じゃぁ、少しだけ遊んでおこふかなぁ。」

「ん?」


備え付けのローションを手にとると、彼はあたしを立たせて、お尻の上からそれを垂らす。冷たひぃ。そかそかぁ。

くちゅくちゅと言う音と異質な快感。

手の指に力が入る。ふぅっと息を吐き出す。

「さて。遊んだし。」

感じそうになったところで、あっさりと終了された。




頭の上で声がする。
あたしは目を閉じたままそれを聞いていた。

「このままイッテしまったらきっと怒るんだろうなぁ。」

唇を離して、あたしは答える。

「怒るよう。ていうか、哀しみにくれると思うよ。」

「そうだろうね、交通費払って飲みに来たようなもんだしなぁ。」

いつもそうやってからかうんだから!


貫かれたままで見上げると、意地悪そうに聞く。

「ん?どした?」

嫌だというと、動きを止める。

「嫌なのか?」

どれくらい時間が経ったのか、わからないけど、あたしは彼の最後の痙攣を身体の中で感じる。離れると流れ出る体液。少しの間は動けない。


一月ぶりにあった彼は少し痩せていたような気がした。
というか、前回が少し太り気味だったので、丁度いい具合に戻ったのかもしれない。それだけハードな仕事をこなしているらしい。詳しい事はあたしは聞かない。

「うーん。眠くなってきたようだ。」

時計を見ると午前3時だった。

「午前3時ってとこだな。」

「なんでわかるの?」

「体内時計だよ。眠くなる頃が3時だ。」

「そかー。」



裸のままで歯ブラシをくわえて、シャコシャコ磨く様がおもしろい。
あたしはベッドで半分寝ながら歯ブラシをくわえる。
お尻のラインがいいなぁと思う。

「ねへねへ。噛ませて♪」

「なんだよ。なんでそんなことするんだようー。」

「いいじゃん。噛ませてくれたって。」

「いいけどさ。笑わせるのヤメテくれよ。」

「何も笑わせてないよ。」

「何でそんなに嬉しそうなんだよ!おかしいぞ。」


ひゃぁひゃぁ笑う彼の脇腹を噛んでは悶えてみた。
でも前よりずーっと筋肉が落ちてしまっている。仕方ない事だけどね。
肩を噛むとイテテテと痛がったので、ごめんなさいと謝って終了した。

「おやすみぃ。」

「あい。おやすみぃ。」

とは言ってみたものの、あたしは興奮して眠れなくて。
睡眠導入剤と安定剤を1錠ずつ飲んで、またベッドに戻る。


ひさびさの腕枕だ。
あったかくて、しあわせな気分で。
3分も経たないうちに、すぅすぅと寝息を立てる彼を見ながら
あたしも知らない間に眠っていた。


 < past  INDEX  will>


~*Yuu
エンピツ