2003年12月29日(月) |
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ひさしぶりの2連休。
あたしは1日中家を掃除していた。 年末だし。 もしかすると彼が来るかもしれないし。
何度か電話で話していた。
「ねへ。年末だうするの?」
「うーむ。わかりません。」
「もうすぐお休みでしょ?こっち来て。」
「行けるとしたら、前半だなぁ。」
「30日がお休みだから。」
「多少前後するかもしれないが、善処しておきます。」
はっきりと答えは出さない人だ。 できるかどうかわからない先の約束は彼は絶対にしない。 だからいつもあたしはギリギリまでヤキモキして待つ事になる。
多少前後するかもしれないと彼が言うので、仕事場のスタッフの子に話して、休みを替わってもらって、2連休できるように調整した。 あとは彼からの連絡を待つだけ。
28日。連絡はない。もう彼は仕事も休みになっているはずなのに。 明日からやっとあたしの休みだというのに。メールを送ってもレスはなかった。
29日。お休み。相変わらず連絡はない。 どうするのか?どうなるのか?そう思いながら、考えないように考えないようにとあたしは家を綺麗にすることに没頭する。
ゴミを出して、布団を干して、洗濯をして、掃除機をかけて…。 年末だということもあるけれど、いつ彼が来てもいいようにと思っていた。 急に来る事もある人だから。急に来てもいいように。
何度かメールを送る。相変わらずレスはない。 もしかするとダメかもしれないなと、そう思って、期待はしないようにしている。 でも心のどこかで、もしかすると来るかもしれないと、ほんの少しだけの希望。 1日に何度も携帯をチェックする。やっぱり返事はない。 その度にあたしは声に出して言った。
「チキン様のばか。」
きっと10回は言っただろう。もう最後は半泣き状態。
ほとんど掃除が終わって、窓の外はもう暗くなっていた。やはりまだ連絡はない。 もう、絶望的…かな?
お友達が夕方来るかもしれないと言っていたのでメールを入れてみた。
「晩ご飯一緒に食べよう。」
そのメールにもレスはない。 彼にもメールを入れてみた。
「連絡下さい。」
相変わらずレスはない。 みんな年末で忙しいんだよね…。なんだかひとり取り残されたようで少し淋しい。
久しぶりに1日中動き回って疲れたので、お風呂にお湯を張ってゆっくりと入った。 お風呂から上がると、お友達からの返事のメールが来ていた。
「9時頃になるけど待っててくれる?」
あたしはもう彼は来ないと思っていたので、待つよとメールを入れた。 こんな時間になっても何も言って来ないのはきっともう無理なんでしょう。
彼女が来たらでかけられるように、洋服だけ着替えた。スカートにセーター。お休みの日くらいスカートがはきたかったから。いつも素敵な彼女と一緒に出かけるのに、ジーンズは嫌だったし、少し鬱気味だったから、華やかな気分になりたかったのかもしれない。お風呂上がりなので、お化粧はまだいいやと思ってしなかった。
少しブルーな気分でCDをかけてぼーっと聴いていると急に携帯が鳴った。彼からの着信音。予想もしていなかったので慌てて出る。少しドキドキしてる。こんな時間の電話…もしかしたら。
「こんばんわ。」
「こんばんわ。」
「業務連絡です。実は今日出張してました。」
「え?出張?どこ?」
「東京。」
「…そなの。」
「いやぁ、そこから飛行機で行こうかと思ってたんだが、実は明日しなければならないことが出来まして、結論からいうと、今回は無理です。」
「え…無理なの?」
「あい。」
「じゃぁ、来年まで逢えないの?1月は無理だよね。忙しいし。…2月とか?」
「そんな先の事はわかりません。」
「期待してたのにぃー。諦め切れないよう。」
「はぁ。」
「明日はそれだけなの?他は何もないの?」
「ないよ。」
「じゃぁ、あたしが動けば逢える?行ったら逢えるの?」
「うむ。大丈夫だね。」
「じゃぁ、行く。明日行く。」
「あい。」
そんな会話をして、急遽明日、あたしが行く事にした。 時計を見ると7時40分だった。彼の住む町へ行く新幹線は最終がもう出たところだった。 もう少し早く連絡をくれていたら、今日行けたのに…。それが悔しかった。
思いついて、ネットで検索をかける。 少し手前まで行く新幹線が8時半にあることがわかった。
間に合う!
すぐにメールを入れた。
「途中までなら今日中にいけるかも。」
「良いよ。」
その返事を受け取った瞬間、あたしはスカートをジーンズに着替え、鞄に下着と最小限の化粧品と長袖のTシャツを詰めた。
携帯が鳴る。
お友達だった。
「今から高速乗るから、あと少しで…。」
「ごめん、今から急遽彼んとこ行くことにしたの!」
手短にそう言って、電話を切った。 バッグを掴んで、走るように家を出た。
時刻は午後7時50分。 時間は40分しかない。最寄り駅まで車を飛ばす。
もしかすると間に合わないかもしれない…。
普段なら20分かかる道のり。最寄りのJRの駅から新大阪までは15分程かかる計算。 信号無視を1回した。制限速度は軽くオーバーした。 駐車場に車を入れる。8時4分。 駅に走る。切符を買う。
掲示板に8時7分快速と出ていた。階段を駆け下りて、列車に飛び乗る。
新大阪に着くと階段を駆け上がった。 券売機でチケットを買う。空席検索の時間ももどかしい。
指定席…空席なし。
自由席に変更して、チケットを受け取って、自動改札を通った。
慌てて出てきたので腕時計を忘れてしまったので、携帯で時間を確認した。まだ5分ほど余裕がある。何も食べてないので、サンドウィッチと飲み物と雑誌を買って、雑誌を買ってホームに上がると、ちょうど新幹線が滑り込んで来たところだった。 新大阪始発だ。だから自由席はガラガラ。助かった。
乗り込んで席に着いて、やっとほっとした。 「無事に乗れました」と彼にメールを入れ、デッキに出てお友達に電話をかけて事情を説明する。彼女は急にキャンセルしたあたしに「気を付けていっておいで」と言ってくれた。
席に戻って、ふと我にかえると、化粧もせずに慌てて来たことを今更ながら恥ずかしく思った。そして、思いついて携帯ネットで列車検索をしてみる。
え?うそ?
検索結果には、 8時半と9時台の2本の新幹線。
…これが最終じゃなかったのね。
家で検索したときは、この1本しか出なかったので、勝手に最終だと思い込んでいた。なんておばかさんなの!思いこみで、スッピンでずっと走って来たのに! そんなことを考えると、誰も見てないけどあまりの恥ずかしさに顔が赤くなった気がした。
でも、ま、いっか。早く着けば早く逢えるし。 それよりもお化粧しなきゃ。
貴重品と化粧ポーチを持って、あたしは洗面台のある連結部にゆっくりと歩いていった。
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自由席はガラガラだった。
ふたりがけの窓際に座って、雑誌をぱらぱらとめくる。すみからすみまで目を通す。 時間を確認すると、まだ1時間も経っていない。
仕事場のスタッフに今日の様子をメールで聞く。 明日の指示を出して、よろしくねとメールのやりとりを終えた。
まだまだ到着まで時間がある。
買ってきたお茶を飲んで、目を瞑ってみる。眠れない。なかなか時間が経たないのがもどかしい。ふと気付いた。あたしは彼と逢ってからどこへ行くだとか、どうするだとかまったく考えていなかった。ただ、少しでも長い時間一緒にいられると思って、慌てて出てきただけ。
ああ、どうしよう。
晩ご飯は食べたのかしら? 車で駅まではどれくらいかかるのかしら? 部屋には一度帰ったのかしら? 明日の用事は何時頃なのかしら?
何も確認していなかった。ただ8時半の列車に乗ることしか考えてなかったから。
今日はどこに泊まるのかさえも考えていない。 「よいよ。」のメールを見て、反射的に家を出てしまった。
時間を確認すると、あと10分ほどで到着時間。
「もう少しで着きます。どこ行けば良い?」
そうメールを送信して、真っ暗な窓の外を見ていると、徐々にスピードが落ちてゆくのがわかる。ああ、ほんとに来ちゃった。
新幹線が停車する。 荷物を取って、あたしは出口へ向かう。ドアが開く。
「寒っ。」
外は寒かった。 長袖のTシャツを持ってきて良かったなと思った。 でも、デート用の服装じゃぁないわ。考える暇もなかったもの。 ただ、きっと寒いだろうと思ったからジーンズに履き替えただけ。 色気も何もないダウンジャケットを着てきたことを少し後悔。
改札を出る前に少し戸惑う。改札は2カ所あって、どちらを出ていいのかわからない。 彼から連絡があるまで待っていようと、待合室へ入ったとたんに携帯が鳴った。
「どちらですか?」
「まだ改札出てないよ。どっちに出れば良い?」
「どちらでも。」
「うんと。」
「じゃぁ、淋しい方で。後2−3分ほどで着きます。」
「あい。わかりました。」
指定された改札口を出て少しすると見慣れた車が走ってきた。 一月半ぶりだ。
車に乗り込もうとすると、助手席はCDやMDでいっぱい。
「ちょっと待っておくれ。」
「あい。」
彼が荷物を後部座席へ移動するのを待って、あたしは車に乗り込む。
「こんばんわぁ。」
「こんばんわぁ。」
「だいじょぶなの?」
「ん?だいじょぶだよ。」
「ていうか、まだご飯を食べてないんだよ。ガソリンも入れなあかん。 あなたは食べたのですか?」
「新幹線の中でサンドイッチを食べました。」
「はぁ。じゃぁテキトーに向かってみよう。」
スタンドを探して、ガソリンを入れて、ファミレスに入った。 車の中では相変わらずくだらない会話しかしていない。
仮面ライダーがどうだとか、アニメの話題とか。そんなのばかり。
ファミレスで彼は鶏の唐揚げとピザを頼んで、あたしは少しだけとオニオングラタンスープを頼む。料理が来るまでの間も、普通に話す。一月半ぶりなのに、全然久しぶりなかんじがないのが不思議。
「さて、行きますか。」
彼がそういって席を立つ。 会計を済ませて外に出ると、やっぱりとても寒かった。
車を走らせながら彼が急にあたしに聞く。
「それはそうと、勝手に群生している場所へと向かってますがよろしいでしょうか?」
「あい。よろしいです。とうか、そこしか泊まる所ないでしょう?」
「はぁ、そうですね。ではどこが良いすか?」
「どこでも。でも年末だし空いてるのかなぁ?」
ラブホテルがいっぱい。 毒々しい程のネオン。どこも少し古ぼけた感じがするのがたまにきずです。 少し洒落たところはやっぱり満室。
「そこは泊まり高いよう!」
「そか。」
「あい。どこでもいいけど、やっぱ高いのはダメでしょう。」
「じゃあ、ここは?」
「あ、ここでいいよ。」
ワンルームワンガレージ。 ガレージの上に部屋があるタイプ。 荷物を持って、トントンと階段を上がって部屋に上がった。
「うわぁーーーーー。すごひねぇ。」
「うむ。いい感じだな。」
すごいレトロな感じでした。 今時、エアシューターでお支払いするっていうのもすごい。 幾何学模様のカーペットだとか、天井が鏡張りだとか、古いヒーターだとか。 でも、そゆのはぜんぜん気にしない。 なんていったって、あたしたちは以前、最低ランクのラブホテルを経験したし。 あたしはさっそくお風呂にお湯を入れはじめた。
ソファに座って、持ってきたものを彼に渡す。
「あい。これ。」
「なんですかあ?」
「クリスマスプレゼントです。」
「はあ。それはどうも。」
「開けてみてください。」
「あい。」
「えと。XLにしてみました。良いやつらしいです。普通に着れるでしょ?」
「あい。普通に着れますね。」
「それは良かったです。」
これで彼にクリスマスプレゼントを渡す事ができた。 あたしが貰ったものは甚だしく脱力グッズだったけど。 やっぱり、普通にクリスマスっぽいこともしたい。
お風呂がいっぱいになった。 相変わらず彼は潔く、テイっと着ていたものを脱いでしまって、風呂だ風呂だーと入っていく。お湯の中で少し戯れた。
「絞ってみやふ。」
「何も出ませんよ。」
「…出たぞ。」
「はっ。ほんとだ。なんで出るんだろふ。」
飲んでいる薬の作用で、あたしは「おっぱい」が出るようになっているらしい。笑 逢うたびにそれを確認されて、なんだか恥ずかしいような情けないような…。
あたしはお風呂から上がって、洗面所で顔を洗う。 さっぱりとした気分でベッドに横になった。
「さてと。とりあへずくわえるか?」
「うんと。くわへなひよう。」
「ん?何から始めるんだ?」
「キスから始めてください。」
「うーむ。小さいところからくわえていただこうかと思ったんだけどね。」
ひさびさのキス。 何もかも一月半ぶりです。
久しぶりのセックスは、ちょっと痛くて、それでいて気持ちよくて、たまらなくて、声が出てしまう。それを抑えようとすると、別に出してもいいんじゃぁないか?とか言われて、あたしは抑えることを止めて声を上げる。
何度もあたしはイッて、疲れると離れて、何度かあたしは彼を口に含んで愛撫する。 嗚呼間を押さえ込まれる無理矢理な感じにあたしはまた欲情する。
「お口でイッテしまおうかなぁ。」
意地悪をするかのような彼の声が頭の上で聞こえる。
「ヤだ。それはヤだ。」
「中でいって欲しいのですか?」
「当たり前です。」
最後はあたしの中でイッテ。
動きが激しくなって、彼がイクよと言う。 あたしも、もう一度果てる。
終わって離れようとする彼をあたしは制止する。 「も、少し、このままで。」
中でイッタ後の余韻がたまらなくイイ。 しばらくの間、あたしはそれを味わっていた。
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「ねへねへ。明日、何時出発?」
「うーむ。午前中には着きたいなぁ。」
「そかぁ。じゃぁ逆算して下さい。」
「10時ってとこだな。」
「じゃぁ9時にアラームを。」
「俺は9時45分でも間に合うよ。」
「あたしが勝手にくわえて、勝手に乗る時間も含めて9時です。」
「はぁ。」
携帯アラームを彼がセットして、あたしは睡眠導入薬を半錠飲んで、ベッドに潜り込む。
一月半ぶりの腕枕。しあわせー。
「暑いよ。」
「ん?暑い?」
「いや、~*Yuuちゃんの身体が熱いんだよ。」
「そかぁ。相変わらず寝付きはいいんだよね。」
「うむ。寝起きは悪いけどね。」
「ものっそい悪いね。」
そんな会話をしながら、薬の効き目もあって、あたしは知らない間に眠っていた。
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