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2002年01月18日(金) 食べたり飲んだりすることで。

 豚肉と長ネギがほどよく煮えただし汁に味噌をといていたら、恋人から電話。どうも仕事でくさることがあったらしく、日本酒いっぱいどう? のお誘い。
 みそ汁の火を消し、炊きあがった御飯をとりあえず混ぜっかえして、10分後には家を出ていた。

 よく行く美味しい焼き鳥屋で、お気に入りの酒肴と燗酒をかこむ。
 「どうも気持ちが晴れなくて」という彼に、「大丈夫、わたしと美味しい日本酒飲んでればすっかり忘れるよ」と飲みだしたら、やっぱりわたしの云った通りになった。こちらはこちらで、顔を見ることができて嬉しさいっぱい。もちつもたれつ。

 お互い、それぞれ夜の時間にやるべきことのために、終電前に帰宅。

 帰宅後。
 ちょっとした偶然で、10年以上前わたしが演出した芝居に出演してくれ、以来連絡の途絶えていた(これもやはり、連絡をもらっても返事をしなかったわたしのせいではあるが)俳優のHPを見つけた。

 今や焼き肉屋をはじめとする飲食業の会社の社長である。

 それでも、不思議なもので、その当時、彼が俳優として持っていた魅力は、そのHPに書かれた彼の文章から読みとれる生き様にも見えていて、なにやらわたしは、驚きながらも、懐かしい気持ちに。

 先日も書いたが、こういう時に手紙を書くゆとりが今はある。
 書き始めたら止まらなくなってしまい、彼のことのみならず、狂牛病で頭打ちの全国の焼き肉屋さんのことや、かつて仕事をして会わないままの人たちのことや、深夜に色んなことを思いながらキーボードをたたき、送信してふと時計を見ると、2時間半もたっていた。馬鹿だなあ、と思いつつも、そういう時間が今はうれしい。

 俳優時代、(わたしも含めて)観客を和ませ楽しませてくれた彼が、人々に食を提供する場所で働いているのは、これもまた嬉しい話。

 ふだん、仕事をしている時は缶詰状態だから、コンビニのおにぎりとサンドイッチで生きている。これが劇場に入ったらお弁当になる。だから、「美味しいもの食べたいね」が仕事の合間の口癖になる。もちろん、ただ美味しいだけじゃ足りない。あの店に行けば・・・と思わせてくれる、時間と場所を求めているのだな。
 お気に入りのお店に、ずいぶん心と体が救われてきたと思う。

 そして、現場から離れている今は、もう7年ぶりくらいの自炊生活。かつては食べてくれる人がいなければ作る気がしなかったものだが、今はそうでもない。歳をとるということがもたらす、微妙な変化が、こんなところにもある。このことを書き出すと、また長くなってしまいそうだから、いつか日を変えて。


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