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2002年02月17日(日) 書評が好き ●それから(昴ザ・サードステージ)

 書評を読むのが好きだ。
 この人が薦めるなら読む!と思っている評者が幾人かいるし、評されている作品自体より批評文そのものの方がぐっとくる方もいらっしゃる。
 面白いのは、なんといっても、読んだその人のぐっときた感じがその人らしく伝わってくる文章だ。

 今年のはじめに、文芸批評家の向井敏さんが亡くなられた。もうその愛情溢れる批評が読めないと思うと、とっても悲しくって、近刊の「残る本 残る人」を買ってきた。この先読めないので、一気読みせず少しずつ読んでいたのが、もうすぐ読み終わりそう。(まだ読んでいない著作はたくさんあるのだが)
 向井さんのニュートラルな文章は、読書への愛情、ひいては、人間への愛情、人生への愛情にまで広がって、読書する人々著作する人々を祝福してくれるようだ。

 今、朝日の書評担当に久世光彦氏がいらしゃるが、彼もまた、読みたいと思わせてくれる人だ。
 しかし、向井さんとはずいぶん違う。毒がある。ニュートラルな愛情なんてものじゃなく、ごつごつして時にいぎたなく、時に輝かしく、清濁混交の感がある。そう思っていたら、氏は今日の書評欄で、このように書かれていた。
・・・著者のことを書くくらいなら〈自分〉、つまり〈私〉について書こうと努める。でないと、その〈本〉についての私の思いは、読む人に伝わらないと思うのだ。・・・・

 いずれにしろ、本当に読書を愛している批評家の手になる文章は、この世に愛すべき素晴らしい作品が生まれることに、間接的に寄与していると思う。まあ、あまりいい批評ばかり書かれると、ついついあらゆる新刊を買ってしまい破産しそうになるのだが。

 そう言えば、この間、近刊50冊をBookOffに持っていって、1300円だった時は悲しかったなあ。世の中の作家と呼ばれる人たちは、ちょっとこだわりのある古本屋ならともかく、BookOffで自分の著作を見ると、もの悲しくなってしまうでしょうね。


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