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| 2003年03月04日(火) |
別の……何か別の……。●贋世捨人(車谷長吉) |
●横浜のホテルへは、わざわざ高いお金を払って、眠りを貪りにいったようなもの。それにしても、58階から眺める、海と街の夜景は美しく、わたしは眠る前に、車谷長吉を一気に読破。なんとも取り合わせは悪いが、休日だからこそ入り込める、人生のうだうだくどくどの面白さ。人目のよい仕事をしていても、仕事を失っていても、人間自体はたいして変わらんのだと思わせる、彼の人生観を楽しむ。私(わたくし)小説を書き続ける彼の強さと弱さに、共感しつつ、眠りに入った。
●思考するというのは、発音しない言語活動だ。 演劇の仕事をしていると、実に長きにわたって、戯曲のことばとつきあい続けなくてはならない。それが毎日の思考に及ぼす影響は大きく、このところ、別のことば別のことば、と、欲し続けている。自分が偏っていくのが怖い。同じルートをたどって同じ仕事場へ通い続けるという偏りも、やはり怖い。別の視点を別の視点を、と欲して、わたしは本を読み、また、海の側で眠ってみたりする。 そういう視点の置き換えが、どんなに固定化された生活でも容易にできる人生の達人になれればいいが、わたしのような凡人はそうはいかない。 眠りを削っても、お金をかけても、体力を消耗しても、自分に仕掛けていくしかないのだ。
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