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●たくさん、自分のまわりにあふれかえる人たちの中で、どうしても恋しいと思う一人の人がいて。 ふと冷静に考えれば、そんなこと取るに足らないことのようでもあり。 ふと自分の幸福を考えれば、その人のためならわたしの人生のその人以外の要素はすべて捨てられるようでもあり。 そんなこんなで恋しながら暮らしていて。 その恋しい人のからだに、我が両手をぐるっとまわすとき。 ぐるっとまわした両手を結んで、自分の中にその人の体を感じるとき。 どきどきしてる相手の体を感じるとき。 なんて幸せなんだろう、と、思う。 一瞬でも。 幸せ。 魔法にかかったように、幸せ。 その幸福が長続きしないことを知っていることが、魔法の力を強めているのか。その幸福をどうしても長続きさせいと希求するわたしの心が、魔法の力を強めているのか。 いずれにしろ、そんな幸福の中にいるとき、わたしはとてもせつない。 せつなくて、いてもたってもいられなくって、ことばにならない声をあげそうになり、声をあげるかわりに、相手のからだを包む両手に、ことばにならない声をのせる。 そんなとき、彼のからだから優しい反応がかえってきたりして、そこにわたしは百万のことばを読み取ったりして、また、せつなくなる。 いずれにしろ、わたしはせつない。
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