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2003年05月01日(木) 恋人の寝姿を思う。

●午後4時、仕事場についてみると、みんながみんな二日酔い。まあ、長い長い仕事の中で、いちばん飲める日だったからね。
 舞台は開けてみると、タイムが7分も一気に伸びて、しまらない内容。はじめて見るお客さんたちには遜色なく中身を受け取ってもらえるかもしれないが、全公演を見届けてきたわたしには物足りない。いや、ちょっと残念な出来。
 1月初頭からはじまった仕事も、ようやくあと二日三回で大千穐楽を迎える。残りはなんとか、気持ちよく終えたいものだ。

●この仕事を終えたら、ちょっとしたコンサートの手伝いをして、そのあと丸々2ヶ月の休暇に入る。その休暇をどう過ごすかと考えていると、とってもわくわく。まあ、ほとんどが勉強の日々になると思うけれど、この歳になると、勉強する時間を持てることがうれしい。それがもちろん、これからの自分の仕事の布石になるわけだし。

●深夜、名古屋で打ち合わせを終えた恋人から電話。昨日、思いっきり寝たらしく、元気な声。弾んだ声を聞いているだけで、こっちまでうれしくなってくる。
 いつだったか、休みの日(確か日記にも書いたと思うが)、疲れきってわたしのベッドで丸1日寝ていたことがある。明るくったって、お腹がすいたって、うるさくったって、とにかく、むさぼるように眠り続ける。
 日ごろ鋭く人や物をとらえる二つの目が、柔らかなまあるいまぶたの裏で、ひっそりと休んでいるのがわかる。どんどんよじれ乱れていくシーツの皺の隙間に、彼の疲れが吸い取られていくみたい。
 どんな絵より風景よりも、飽かず眺めていられる。
 日ごろぎりぎりまで働いている人が、疲れを癒し、明日への新たな力を蓄えるための、深い深い眠り。大事な大事な、命を蘇らせる眠り。
 わたしは1日中、彼の寝姿を見て過ごした。
 その1日があって以来、「昨日思いっきり寝たからね」ということばを聞くだけでうれしくなる。あの時の寝姿を目の裏に呼び起こし、また愛情を確認してしまう。
 こんな思いを持ち続けて、もう、5年が過ぎた。5年間、わたしは1日も休まず、彼のことを思い続けている。これはもう、立派にわたしの人生の一部だ。


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