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2003年06月14日(土) 二人の男。

●天気のよかったのは、陽が昇って2、3時間のこと。わたしはいつもの暮らしを繰り返す。
 
●早朝から深夜まで仕事に明け暮れる恋人から、久しぶりに電話がかかってくる。午前3時過ぎ。まだ現場で仕事中。
 そんなことは自分が現場にいる時は当たり前のことなのに、何か不思議な感じがする。いや、枠の中に組み込まれているとあれだけ働くわたしが、どうして個人ではこんなに生産力がないかということへの、自己批判。

●恋人の声に張りがあるのでほっとする。わたしも嬉しくなる。さすがに追い込みなので、緊張感が体を支えているのだろう。
 もう長らく会っていない。会えなかった。その間隙に、A氏がどんどん生活に入り込んでいた。
 A氏はどこまでも忍耐強い。わたしが二人の男を心に住まわせることに疲れ離れようと試みても、絶対くじけない。どんな時間であれタクシーを飛ばしてやってくる準備があるし、触られたくないと言えば、我慢している。いくら我がままを言っても、それがわたしの本質でないと知っているのか、ちっとも気にしない。わたしが恋人から離れ、自らのもとに飛び込んでくるのを、ひたすらに待っているのだ。つかこうへいの「ストリッパー物語」や「蒲田行進曲」に出てくる、気の強い女とつくしまくる男の関係みたいなもので、何やら自分がどんどん調子に乗って変容していくのが怖い。

 迷いはないはずなのだ。わたしは恋人のことを誰より大切に思っている。でも、安心とか、生活とか、庇護とか、そんなものどもが、A氏のいつも広げた腕の中にあって、わたしにいつも「おいでおいで」している。ギャラの派生する安定した仕事をしていない時期だけに、それは強烈な牽引力を持つ。
 ともに暮らす男を選んだり、愛するべき男を選んだりすることが、現在の自分を見据えることになるという、どうも面倒な状況にはまりこんでしまった。恋人との間にも色んな問題を抱えているけれど、何があっても恋をしておればいい、という楽さがあったのに……。

 これも今のわたしの不調の原因。自分で選び取って、自分を自ら支えてやるしかない。A氏はわたしを守ることに(息子を守ることと同様)全人生をかけると言うが、やはり、わたしはわたしでしか守れない。それを知ってもらって、もっとしっかりとつきあい直さなくては、わたし自身、選べないかもしれない。


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