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| 2003年06月17日(火) |
結婚することにした。 |
●困ったときの母頼み。昨日、母に電話をする。 母はこのわたしを産み、あらゆる意味で導いた人だ。わたしにとって鼻高々で語れる人である。ふだんは面倒なので、細々とした自らの現在を語ることはないが、岐路に立ったとき、躓いたときは、必ず母と話をしてきた。 このたびも、恋人とA氏の間で揺れていることを報告。
母は、結婚をしたままの恋人とつきあうわたしを今まで認めていた。ふつうの親なら信じられないところだが、母は、人を愛するということを、父一人を熱烈に愛し続けることで、よーく知っている人だ。 「あんたがその人のこと好きで、あんたがそれで幸せやったら、しゃあないやんか。でも悪いことしてるんやから、ええ死に方でけへんかもしれんで。それくらいわかっときや」と、そんな感想を述べていた。 昨日の電話では。 「迷うことないわ。Aさんの方にしとき。あんたが好きやいうからしゃあないなと思うてたけど、ほんまは自分の育てたええ娘が日陰の身やなんてイヤやったんや。だって世間的に言うたらそうやろ。迷うことないわ。Aさんのこともほんまに好きなんやったら、そっちにいき。」 と、明快な返答。
それでもやっぱり恋人のことを思い切る自信がないわたしは、A氏を家に呼び出し、現在の気持ちを伝えることにした。
●A氏は、わたしが恋人に寄せる気持ちをよく知っている。わたしが恋人との色々で傷ついたときに助けてくれることも、しばしばだった。 現在の混沌とした気持ちを整理しながら話すと、じっくりと言葉を選びながら、自分の気持ちを語り、わたしに改めて結婚を申し込んだ。 A氏は、恋人のことを愛しているわたしも含めて、わたしの全存在を守りたいと誓った。決して嘘をつかないタイプのA氏が。 「君みたいな人がそこまで好きで居続けた男なんだから、すぐに思い切れるわけもないだろうし、それは不自然だよ。だから、あいつのことも好きなままでいいから、俺のかみさんになっとけ。あとは、俺が面倒みるから。君を幸せにするのが、俺の役目だから」と。 わたしは、長らく考えて、 「じゃあ、そうさせてください」と答えた。「わたしと結婚して頂けますか?」と。 A氏は、この上なく幸せそうに見えた。長いこと抱きしめられた。心臓がどっくんどっくん鳴っていた。わたしの心はとっても凪いでいて、キッチンに出していた大粒の梅たちが熟れて放つ甘い香りが、風に流れていくのをずっと感じていた。この甘い香りのことは、一生忘れないだろうな、などと思っていた。
●恋人と別れるということは、恋人と過ごすことでわたしが享受してた人生の悦び、人生の美しさを、捨てるということだ。そのことへの不安も、A氏に話してある。信じているから、ゆっくりやれと言われている。わたしは未だに自信がないが、でも、すでにわたしは選んだのだ。進むべき方向は決まったのだ。
●今日は一緒に買い物に出た。わたしの行く先は、相変わらずの本屋である。次なる出会いと喜びを求めて、たっぷり居座るわたしに黙ってつきあって、懐と相談して決めた5冊を、結局プレゼントしてくれた。そして、軽く食事。A氏は、今日、「俺は世の中でいちばん幸せな男だ」という顔を、ずっとしていた。始終にこにこし通しで、もう見られたものじゃない。わたしといられるだけでこんなにも嬉しいのかと、ちょっと感動する。 A氏は、わたしが息子の母親になってくれることも最高だと、喜んでいる。何の不安も持っていない。わたしもその辺りには、おかしなことに不安がない。別に母親になろうなんてことさらに思っていない。とっても可愛い子なので、小さい友達が出来るのが嬉しい、そんなところか。向こうもわたしのことを新しいともだちと思ってくれれば、そのうち関係は育っていくだろう。まあ、人生、当たって砕けろだ。 A氏のもう一つの喜びは、わたしとつきあうようになって、奥さんを亡くして以来のインポテンツが治ったことだ。「俺は日ごとに若返る!」と46歳の男がウキウキしている様を見ていると、わたしはおかしくってたまらない。41歳と46歳の、世間から見れば立派な中年カップルだが、本人たちは子供のように純心だ。可愛い喜びに包まれている。
●明日は、A氏の病死した奥さんの命日だ。一緒にお墓参りに行き、報告することになっている。そして、仕事にひと区切りついた恋人から、電話がかかってくる頃だ。 また、心の揺れる1日になるに違いない。
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