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2003年07月09日(水) 病院に行ってはみたけれど。●フラナリー・オコナー全短篇(下)

●昨夜は、少しずつ少しずつ読み進めていたフラナリー・オコナー全短篇をすべて読み終え、脱力常態だった。
 わたしは本が好きだし、時間が空けばずっと読んでる。それでも、こんな作家を今まで知らなかったのだ。
 詳しくはBook Reviewの方にアップしたが、とにかく、これだけストイックな視点で、これだけの作品量で、人間を描ききって逝った作家も珍しいのではないか? 圧倒されて、そのグロテスクさに気圧されて、その先に自分が受け取るべきものを考えて、しばし考え込む夜だった。
 このところ、休暇の特権で、読めば感想を書くという贅沢な時間を過ごしているが……いい、ほかの本はいいから、とにかくこの短篇集上下2巻だけは、手にとってほしいなと思う。ディープにはまってしまうには、下巻から読んだ方がよいかもしれない。方向性が明確なので、上巻の初期作品が読み取りやすくなるだろうから。
 これを読んでしまうと、駿くんの事件に対する報道が馬鹿馬鹿しくなってくる。少年犯罪と括って上っ面のコメントを繰り返す、大人たちの報道がである。

●昨日、病院に行ってきた。かつて神経の病気で1ヶ月入院していたところである。
 入院以外にも、かつてやっぱり乳房の異常で診察したことがあり、長らく待ったあと、かつてのカルテとX線写真が出てきた。これを見て、医者が言う。
「ふーん、前にも診てるんだね。あ、これ、取ったの?」
「ええ、撮りましたけど」
と、ここでわたしは齟齬に気づく。
「写真を撮ったんですよ」
「あ、写真ね」
え? 何か取るべきものが写真に写っているの? という問いかけがことばになる前に、医者はこう言ったのだ。
「じゃあ、また写真撮って、それで、専門の先生がくる時を予約しときますから。とりあえず、触診だけしときますんでね」
……不安がつのってる人間に、いい加減な発言、専門医じゃないならするなよ。しかもとりあえず、とはなんだ!
さらに、「すぐに取らなきゃならない膿とかはなさそうだけど……ま、専門医に診てもらってから」ときたものだ。

 そんなこんなで、わたしは放射線科にまわされた。部屋に入って、明るい声で「じゃあ、上着を脱いでくださいねー」という看護婦に、待っている間ずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。
「たとえば、妊娠してる場合、X線はまずいですよね」
「はい。今、妊娠してますか?」
「分かりませんけれど、してる可能性はあります」
「先生はどうおっしゃいました?」
「何も聞かれませんでした」
「じゃあ、ちょっと聞いてみますねー」
 と、看護婦は去ったのだが。
 そう。乳房が痛いとか、いつもよりはってるとかいうのは、ある種の病気の初期症状であると同時に、妊娠の初期症状でもあるのだ。それなのに、なぜあの医者は、写真を撮ると決める前に、一言、妊娠している可能性の有無を訊かなかったのだろう?
 帰ってきた看護婦は、また明るく
「じゃあ、今日はやめといてくださいってことですから」
と、報告してくれた。

 わたしは、今、たぶん妊娠はしていない。抜けられない仕事が来年の夏までびっしり埋まっているから、その責任上、子供を作るのは来年まで待とうと話しているから。(もういい歳だからそれもどうかな……)
 でも、決然と、
「はい、じゃあ、妊娠していないことが確認できてから出直します」
と、踵を返して帰ってきた。

 もし。もし、だ。若い女の子が、妊娠の初期症状を勘違いしてやってきて、簡単にX線写真を撮って、何か胎児に影響でもあったら、どうするっていうんだろう? 専門医じゃありませんからですむと思ってるのか。馬鹿。

 というわけで、わたしの痛みは、腹立ちへと変わってしまい、今はおさまっている。でも、こういうことって、腹をたててるだけじゃなくって、ちゃんと医者に面と向かって抗議してくるべきだったかと、少し反省も。

●天気の悪い日が続き、窓を開けて暮らしていると、フローリングの床が何やらべとべとしてくる。大好きな盛夏よ、早くこい。あ、盛夏を迎えると、仕事が始まるのか……。
 次の仕事は、遠い遠い稽古場で、10時から22時までの闘いになりそう。ってことは、わたしは毎日13時間労働平均くらいになるかなあ……。打ち合わせをいれれば、もっとかなあ……。
 今のうちに、読みたい本は読んでおこう。今のうちに、A氏にたくさん美味しいものを作ってあげよう。早くGOたちと暮らしたいけれど、いろいろクリアする現実的なことがあって、なかなか実現しそうにない。
 


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