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2004年02月15日(日) 丸善へ日参。●ロンリー・ハーツ・キラー(星野智幸)

●昼公演と夜公演の間には、必ず外出することにしている。気分転換を図らないと、とても新鮮な気持ちを持ち続けることが出来ないからだ。
 お気に入りは、近くの丸善。わたしにはたまらなく楽しい場所。
 なんたって、書籍売り場である。心に一個の檸檬を携えて出向く。黄色い手榴弾みたいな奴を。人知れず書棚に置いて店を出る。梶井基次郎「檸檬」フリークであるわたしは、そんな想像遊びをするだけで心が弾む。これで40過ぎなんだから笑ってしまうけれど。
 もうひとつ。丸善には必ず文房具売り場がある。文房具ってやつはわたしにとっては仕事道具であると同時に玩具でもあるので、見始めたらきりがない。さんざん眺めた後で、何かひとつレジに持っていく。たとえシャープペンシル一本であっても、必要に迫られていない買い物ってのは楽しい。
 さらには、必ず洋書売り場がある。これもまた心ときめくものだ。お気に入りの作家の未だ翻訳されていない作品をぱらぱらとめくったり、美しいビジュアル本をしばし眺めたりして、ニューヨークやロンドンのブックセンターに入り浸った時間を思い出す。キリル文字の本も置いてくれれば、モスクワ気分も味わえるのになあ。

 とにかく、ほぼ毎日丸善まで散歩している。東京と違って売り場も広々としていて、いい。実にいい。

●星野智幸「ロンリー・ハーツ・キラー」を読了。同世代の作家が日本という国に抱く焦燥感が、これでもかと伝わってくる。深い共感を抱きながらの読書だった。それにしても、文学というのは、一つ事を言うために、これだけのお膳立てをし、エネルギーを注がねばならないのだなあ。このところの、「サウンドトラック」「シンセミア」などの良書をも思いだす。


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