便蛇民の裏庭
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2002年10月14日(月) 地震のあった夜

「今夜おじゃましてよろしいかしら」
と行きつけのお店のスタッフ君へメール。

「また美味しいお酒お作りしますよ、お待ちしてます」
とスタッフ君からの返事。

あぁ、なのになのに。
仕度をするぼくの横で鳴り出すPHS。

「便さん?すみません、スタッフです。
 今夜お店お休みなんです、忘れてました。スミマセンっ」

「あれ、月曜休みだっけ?」

「いえ、昨日平常通りにお店開けてたので今日振替なんです。
 今2号店の方にいるんですが、よろしかったらそちらへいらしてください」

もうっ。
スタッフ君のグラスホッパーが飲みたかったのにぃ。
2号店には材料が足りないらしくそれがない。



「いらっしゃいませ。今夜はなんだかスイマセンでした」

いやいや、きみは悪くないのだよ。
でもイジメタイイジメタイ。



カクテルを差し出す手がとても大きい。
手フェチのぼくにはたまらない。

「スタッフ君て手が大きいよねー」

目をパチクリパチクリしながら

「え、そうですか?」

と自分の手を眺めるスタッフ君。
そのおめめパチクリパチクリがたまらない。

でも最近カクテル作るとき「濃いめで?それとも薄めで?」の問いに
「愛情たっぷりで」と応えるぼくのセクハラにもなれて
「いつでも愛情たっぷりです」とかわされるようになった。
一緒に行ったオトコノコには「はい愛情たっぷりで」と差し出しやがる。
くーやーちーぃ。

「次はなににしますか?」

「んー、もう帰るー」

「じゃぁお水でも」

そしてぼくにはトンっと差し出し、
オトコノコには「愛情たっぷりで」とそっと差し出す。
拗ねてやる拗ねてやる。
お水はキンキンに冷えていて、泣きたくなった。

電話が鳴る。
相方からの電話。

「今地震あったけど大丈夫?」

全然大丈夫。
不安になったのはそっちでしょ。
ぼくは相方と違って地震もカミナリも平気だよ。



お店を出る時にスタッフ君がお見送り。
ふいに大きな手を差し出すスタッフ君。
その手をしっかり握りながら

「こんなとってつけた握手なんか嬉しくないのよぅ!」

とブンブン振ってみるぼく。
大きな手。
いつも美味しいお酒を作ってくれるありがたい手。
無理な注文にも目をパチクリしながら色々考えて応えてくれる。

でも。
今ぼくが欲しいのはその手じゃない。

あー。
ぼくを包んでくれる大きな大きなタオルケットが欲しいなぁ。
涙も吸い取ってくれて、寒さも忘れさせてくれるタオルケットが。

外の寒さで一気に酔いもさめる。
スタッフ君にアカンベーをして、お店をあとにした。


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