Sotto voce
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長年住んだこの家を、 手放さないといけないかもしれない。 自業自得とはいえ、とうとうそんなところまで、 父は、我が家は追い詰められてしまった。
この家が建ったとき 我が家は希望と笑顔で満ち溢れていた 20年後に家族は崩壊し 家すら手放さなければならない、 そんな設計図は一枚だってなかったはずだ。
この家を手放して身軽になろうか 父は簡単にそんなことを言う。
手放した所で父が抱えてるものが どれだけ軽減されるのか。 築20年の家が、父が背負ってるもの全てを ゼロにする力などないと 私ですらわかっているのに。
家を手放した所で軽減されるのは 父の負債の一部とこの家にかかる税金ぐらい? それぐらいじゃどれだけ楽になれるというのか むしろ、新たな住処を探しても 今度は『家賃』というものが必要になると言うのは 父の頭の中にはないのか。
嫁に行くか死ぬか、それ以外では この家を出て行くことは、父を見捨てることは許さない 遠まわしではあるが親戚連中から念を押された。
寝る間を惜しんで、何もかもを我慢して死に物狂いで働いて そうすることで一人で生きていくことを選択した方がよいのか 沈みゆく泥舟に父と乗っかったまま暮らしていくのかよいのか 混乱した頭の中では答えを出すことすらできない。
一睡もできない夜もある。 めまいがして倒れそうになる日もある。 それでも明日は、現実はやってきて 何もなかったように生きていく、その繰り返しが 私を今こうやって立たせている、動かしている。
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