Sotto voce
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本当に好きな人は 決してあたしを甘やかさない どんなに苦しんでいても 手を差し延べてすらくれない そんな彼が他人にやさしい言葉を掛けるのを見て 自分勝手に傷つき ますます落ち込むあたしがいる
その人は とことんあたしを甘やかす その裏に何かがあるのはわかっていても あたしはその偽りの優しさにつけこむ
寂しい女と飢えた男 利害が一致したなれの果て
閉鎖された空間 誰もいない部屋 わずかなあかり 脱ぎ捨てた仕事着 声を漏らさぬように噛みしめる指 相手の肩の向こうに見える 海に落ちていく夕陽 窓いっぱいの真っ赤な空
秘密をひとつ作ってしまった いろんな人に 自分の心に
そのときだけの快楽に 忘れられるのは一瞬だけ 我に返ればまた新たな苦悩の種に この身を焼き尽くすことになる
汗だくで抱き合っても 快楽に濡れていても 心が潤うことはない
ぽっかりあいた心の穴は ますます大きくなって もはや埋められる術は何もない
何も、
何も、
何も。
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