nomiの思考

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1分間小説「5月の紫外線」
2004年05月20日(木)

もうすぐ夏がやってくる。

「5月の紫外線」が気になる頃。千秋は日
差しを防ぐ「帽子」を探していた。

だが、なかなか自分に似合う「帽子」を見
つけることが出来ない。

隣を歩く風子の「帽子」が羨ましくて仕方
が無い。それは風子にとても良く似合って
いた。
           ◇

風子と別れた後。たまたま通りがかった
公園の木の下にあるベンチに腰掛け、日
が沈むのを待つことにした。

木漏れ日を見上げ、ひとり物思いに耽る
千秋は、「5月の紫外線」を気にしながら
歩く自分に、少し疲れていた。

「どうしよう、そばかすが出来ちゃう」

はたと母親の頬に散りばめられた「そば
かす」を思い出す。

強い日差しのなか、庭の「植物」を心から
愛し、毎日たっぷりと「水」をやる母親の姿
が目に浮かぶ。

素顔のきれいな彼女には、日差しを防ぐ
「帽子」も、「日焼け止めクリーム」も必要
なかった。

           ◇

千秋は、すくっと立ち上がり日向に出ると、
直射日光を顔いっぱいに浴びて目を閉じ
た。

だが少しも経たないうちに「5月の紫外線」
が千秋を煽る。

「急がないと。夏はもうそこまで来ている」

結局、千秋が公園を去ったのは、日が暮
れた後。明日もまた、何処にあるかわから
ない「帽子」を探して歩き続ける。




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