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もうすぐ夏がやってくる。 「5月の紫外線」が気になる頃。千秋は日 差しを防ぐ「帽子」を探していた。 だが、なかなか自分に似合う「帽子」を見 つけることが出来ない。 隣を歩く風子の「帽子」が羨ましくて仕方 が無い。それは風子にとても良く似合って いた。 ◇ 風子と別れた後。たまたま通りがかった 公園の木の下にあるベンチに腰掛け、日 が沈むのを待つことにした。 木漏れ日を見上げ、ひとり物思いに耽る 千秋は、「5月の紫外線」を気にしながら 歩く自分に、少し疲れていた。 「どうしよう、そばかすが出来ちゃう」 はたと母親の頬に散りばめられた「そば かす」を思い出す。 強い日差しのなか、庭の「植物」を心から 愛し、毎日たっぷりと「水」をやる母親の姿 が目に浮かぶ。 素顔のきれいな彼女には、日差しを防ぐ 「帽子」も、「日焼け止めクリーム」も必要 なかった。 ◇ 千秋は、すくっと立ち上がり日向に出ると、 直射日光を顔いっぱいに浴びて目を閉じ た。 だが少しも経たないうちに「5月の紫外線」 が千秋を煽る。 「急がないと。夏はもうそこまで来ている」 結局、千秋が公園を去ったのは、日が暮 れた後。明日もまた、何処にあるかわから ない「帽子」を探して歩き続ける。
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