nomiの思考

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1分間小説「居たたまれない」
2004年05月27日(木)

大学時代の音楽サークルの仲間にいわせ
ると、今日子はロマンチストで一途な女の
子。誰もがそう信じて疑わない。

卒業後、定期的に開催される音楽サークル
の会合では、毎回のように、今日子が「葉
加瀬太郎」似の徹に、「今でも惚れているん
じゃないか」という話題で盛り上がる。

今日子にはそれが居たたまれない。

           ◇

高校時代のこと。ある朝、惚れた男に告白
し、めでたく付き合うことになったが、日が
沈む前に飽きて振ったという残酷な事実が
ある。

もちろん、皆に非難されたことはいうまでも
ない。社会人になった今でも、時折話題に
のぼっては責め立てられる今日子だった。

            ◇

だが、大学の音楽サークルの仲間は、今日
子が「熱しやすく冷めやすい」ことなど、知る
由もない。

入部したその日に「葉加瀬太郎」似の徹に
一目惚れをした今日子は、「運命の人に出
会った」と、サークルの全員に打ち明けた。

ところが、惚れていたのは入部してわずか
3日間。熱が冷めたその理由は、徹が履い
ていた「蛍光色の靴下」が眩しかったから。

今日子はそれを、誰にも言えずに卒業した
のだった。




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