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「あ、やっぱ今日はイタリアンレストランに いきたい」 凛がいつものラーメン屋の前で勇にそうい ったのは、イタリア料理が食べたかった訳 ではく、ラーメンを吐かずに食べる自信が なくなったから。 田舎育ちの穏やかで素朴な勇とは、半年 前友人とたまたま遊びに行ったクラブで出 会った。2人は意気投合し、いつの間にか 恋人同士に。デートは半年間ずっーと同じ ラーメン屋。それでも凛は、勇と一緒にい られるのなら、毎日ラーメンでも構わない。 最初はそう思っていた。 ◇ 2人が入った小さなイタリアンレストランは、 街の片隅にある、知る人ぞ知る有名店。 パルマ産のプロシュートとタコのマリネを 目の前にして、ナイフとフォークを握る勇の 姿を、凛は少し不安そうに眺めていた。 「ねね、ここ、どの料理も美味しいくない?」 「ブヒ?俺、やっぱラーメンが1番好きだぁ〜」 「はいはい、ラーメンね。好きだけど、さすが に半年食べ続けてたら飽きてきちゃった」 あんたにもね。イタリアンレストランの中心 でラーメンを叫ぶ勇にそういってやりたい。 凛は咽まで出かかった言葉をワインで流し た。
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