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もうすぐ7歳になる仁は、一見しっかり者に 見えるが、実は臆病者の天然ボケ。 ついに、近所のスーバーへ、初めての「お つかい」にいく日がやってきた。 何の問題もなく、スムーズに買い物を済ま せた仁は、きっと母親が褒めてくれるに違 いないと、わくわくしながら家路を急いだ。 すると、突然曲がり角から出てきた野良犬 が、買い物袋の中を覗き込んだまま、食材 を狙って離れない。 「めっ!めっ!」 恐怖心で目にいっぱい涙を浮かべながらも、 必死に食材を守ろうとする仁。その姿は実 に逞しく、いじらしくもあった。たまたま近く を通りがかったおじさんの助けもあって、野 良犬退治に成功した仁は、少し、大人にな ったような気分だった。 ◇ だが、仁は家の玄関を目の前にして、買い 物袋を持つ右手が、なんだかやけに軽いこ とに気がついた。買い物袋を覗いてみると、 なんと袋の底に穴が開いていて、入ってい たはずの食材がほとんどなくなっている。 仁は慌ててもと来た道を戻ってみたが、不 思議なことに、どこにも食材が落ちていな い。呆然と道路の真ん中に立ち尽くす仁。 遠くの方で、さっきの野良犬が膨らんだ腹 を見せて笑っていた。
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