本番当日。 昨日オイラが作った資料は上司に言わせると「完璧」だったらしい。 が! が! が!
をい。イイ加減にしようや。 もう出発まで1時間ちょっとだっつーのにクライアントから次々修正が入る。 ヒマなのか? それともオイラをからかってるのか?(うら) それでも間に合わせちゃうオイラ。 よく頑張るねぇ。
他の仕事投げ出したままタクシーに飛び乗る。 いつもの通りをタクシーは走る。
「ああ、アマンドのリングシュー食いたい。」
時々フェティッシュバーへのお土産にするんだが、 ここのリングシューはカスタードが「ざらり」とした感じでスキ。 今日、昼の六本木通りは思いのほか空いていて気持よかった。
左側に移転した六本木セビアンを見つけた。 あまりにもよく知られたアダルトショップ。 渋谷の店はよく顔を出すけど、こっちはテリトリー外なので知らない。 なんだ。ココだったのか。 前より駅に近くなった感じ。 ここ数日毎日往復通っているのに今頃気付いた。
オイラは会社の用事で車に乗ると前を向いていることが多い。 元々ドライブ大好きだし、車外を眺めるのも大好きで、 知り合いの車に乗せてもらうと前右左とせわしなくキョロキョロするのだが、 仕事関係で車を利用する時は殆んど前向き。 隣向くと上司がいたりするからね。
重い資料を抱えたままタクシーを乗り降りしたせいか 買ったばかりのスーツの裏地が少し切れる。 ち。ツイてない。
気がつけば街のあちこちでバレンタイン向けのチョコレートを売っている。 ふと。 街角で見かけた、チョコレートを両手に抱えている女のコは 一体どういう気持であんなに抱え込んでいるのだろう、と考える。
おそらく日本でチョコレートが一番よく売れるシーズンだろう。 でも一日でも過ぎたらそれら特別の包装は剥がされ、 チョコレート達はあるいは溶かされ、あるいは詰め替えられ、 普段着のチョコレートに戻る。 あるいは他のものに姿を変える。 そこから一掬いのチョコレートを選んだ彼女の手から渡されるチョコレートは おそらく食べてもらえるのだろうと考えたいけれど、 あるいは捨てられるものもあるのだろう。
どんな思いをこめてどんな人に彼女はチョコレートを渡すのだろう。 明日アタシが手に入れるチョコレイトは果たしてどこに行き着くのだろう。
両腕一杯のもしかしたら廃棄されるチョコレートを体中に塗ってお願いしたら 誰かアタシを舐めてくれるだろうか。 捨てられる寸前でアタシが救ったチョコレートを飲み込んでくれるだろうか。
タクシーの中、上司の面白くもない世間話を右から左へ 車の流れのようにある一定の秩序を持って聞き流しながら、 セビアンのウインドウに立っている半裸のマネキンを眺めてそんな風に思った。
〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜
|