アイ ナンカ イラナイ。
夏野 空の日記

2002年06月24日(月) 彼の背中の爪の跡

起き上がると背中が痛い。
どんよりとした曇り空。

天気のせい?


昨日の夜中どうしようもなく涙が止まらなくて泣いた。
高ぶった神経はアタシを眠らせることを許さなかったので睡眠薬を追加しようと起き出した。
何故か体は軽く。
頭が軽いのか?

寝る前に飲み残したアイスコーヒーで流し込む。
そのまますぐにベッドへ戻ればよかったものを、どうしてだか爪を切りたくなった。

アタシは手を褒められることが多い。
「キレイな手ぇしてるよねぇ。」
ここ半年だけでも何度言われたことか。

台所仕事をしていないわけではない。
それどころか、結構酷使している。
けれどハンドクリームなど使ったのは生まれてから数度だし。

同時にワラワラと色々なことが頭の中に沸き起こる。
アタシはそれらを忘れようとでもするかのように爪を切るという行為に集中する。
いつのまにか忘れられてゆく就寝という行為。

パチン。
パチン。

「麗香さんの爪はいつも尖ってるんだよねぇ。」

タマにしか顔を合わせないというのに、そんなところまで観察して覚えているヤツもいた。
アレは誰だったか。

足の指の爪まで切る。
残したのは左手の小指の爪だけ。
けれど全部尖っている。

イタカッタラゴメン。


「思いっきり爪立ててもいいよ。」

アレはどこで聞いた言葉だっただろう。
頭の中で色々な男に同じ科白を言わせてみる。


今ここにある疵はおそらく自らの爪でアタシが引っ掻いたものだ。

網タイツは確かにあの時破られたのだ。





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