2002年04月02日(火) |
会社経営陣の監視強化 キーワードは「透明性」 |
日経6面に、 「不祥事抑止へ経営陣監視」という見出しで、企業不祥事への反省から、経営改革に向けた動きが世界的に広がっており、そのキーワードは「透明性」であるという記事が載っていた。
記事の最後に、日本の現状についても触れており、「日本企業の透明性確保の動きは後手に回っている」「商法改正で課題になっていた役員報酬個別開示も見送られた」とのことである。
そこで、役員報酬の開示について触れてみたい。
現在、ほとんどの会社が、役員報酬の総額だけを株主総会で決め、個別の役員に対する報酬は、取締役会で決めるのが普通である。
したがって、どの役員がいくらの役員報酬をもらっているかは、株主には分からない。
このように、個別の役員報酬は取締役会の決議に委ねてよいかは、従来から議論があり、裁判にまでなっている。
そして、最高裁は、株主総会の決議で取締役全員の報酬の総額を定めて、その具体的な配分は取締役会の決定に委ねてもよく、株主総会の決議で各取締役の報酬額を個別に定めることまでは必要ないとしている。 (この判例は、商法の勉強をするときに必ず出てくる判例である)
確かに、取締役というのが、サラリーマンに「取締役」という肩書きがついただけと考えると、給料まで人に見せるのは抵抗があるだろう。
しかし、取締役が経営者であると考えると、株主から委任されて会社経営を任されているのだから、その報酬を明らかにするのは当然ではないだろうか。
最高裁判例のように、法律上は、株主総会で、個別の役員報酬を決めることまでは要求していないにしても、当該会社の自主的判断で、個別の役員報酬を開示することは差し支えないはずである。
今日では、取締役の強力なリーダーシップが要求されている。 他方、そのような強力な権限があるだけに、第三者によるチェックもまた時代の要請であり、そのためには会社経営の透明性をはかる必要がある。
それゆえ、取締役は経営者であるという立場を鮮明にして、個別の役員報酬についても開示し、もって、経営の透明化をはかるべきではないだろうか。 そして、そういった企業こそが、横並び主義で、法改正しない限り、従来どおりのことを踏襲しているだけの企業に比べて、生き残りがはかれる企業であると思う。
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