2002年07月26日(金) |
財務省がムーディーズに対し損害賠償請求? |
日経(H14.7.26付)5面に、財務省が、国債の格付けを引き下げたムーディーズに対し、「格下げで政府や企業が不当にダメージを受けたときは損害賠償の対象になる。」と書いて、提訴する可能性に言及したと報じていた。
しかし、損害賠償請求は無理だろう。
まず、第1に、損害の立証が困難である。
格下げによって国債が売れなくなったというのであれば分かるが、そのような話は聞いていない。 イメージが悪くなったというだけでは、損害があったとはいえないだろう。
第2に、因果関係の立証が難しい。
仮に損害があったとしても、それが格下げによるもにかどうかは立証できないだろう。
そもそも、日本の(あるいは企業)の実体が悪いからダメージを受けただけであって、格下げのせいではないということになる可能性は高い。
第3に、過失の立証が困難である。
格付けは、数式があってそれに当てはめれば自動的に答えが出るというものではない。
いろいろな判断要素があり、それをどの程度重視するかは広い裁量に委ねられている。
つまり、著しく不合理な判断でない限りは、過失があると認定することはできないであろう。
ということで、格下げに対し損害賠償するという財務省の言い分は、国内の政治家向けパフォーマンスであろうと思われるのである。
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