日経(H14.11.14付)・社会面に、ホテルに12連泊して無銭飲食をしたことから、詐欺罪で逮捕されたという事件を報じていた。
無銭飲食が詐欺罪になるかは、司法試験では格好の勉強材料である。
もちろん、支払う意思も、お金もないのに、レストランで注文することは、その時点で詐欺が成立することは当然である。
では、払うつもりでレストランで注文したところ、食べ終わってから金のないことに気づき、逃げ出した場合は詐欺罪が成立するだろうか。
この場合は、詐欺の実行行為がないから詐欺罪は不成立であるとされている。
試験勉強をしていたころ、上の事例だけでなく、いろんな事例を自分たちで想定してみて、夢中になって議論した。
ところが、いろいろと事例を想定しても、実務では問題になることはない。
というのは、取り調べの時に、警察の都合のよいように供述調書が作成されてしまうからである。
「お前、元々払うつもりがなかったんだろう」と厳しく問いつめられて、最初は、「いや、私はお金を持っていましたから、無銭飲食なんて考えてませんでした。」なんて強がっていても、取調官から、「でも、うまくいけば払わないで済むという期待もあったんだろう。」と言われ、「そりゃ、そうかも知れませんが・・。」と言おうものならお終いである。
取調官は、[お金はありましたが、うまくいけば払わないで済むと思い、注文しました。」という調書を作成してしまう。
被疑者としては、「ちょっと違うなあ。」と思いながらも、「まあいいか。」と思って供述調書に署名すると、それが命取りの供述になる。
ということで、実際には、当初から無銭飲食をするつもりで注文したという調書ができあがるため、最初は払うつもりで注文したといったような事案になることはないのである。
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