2003年04月22日(火) |
弁護士が増えると、医療をネタに稼ごうとする、おかしな人が増えるか |
日経(H15.4.22付)社会面に、厚生労働大臣が「弁護士が増員されると、医療をネタに稼ごうとする、おかしな人がどんどん増えてくる」と発言したことの続報記事が載っていた。
続報記事では、医療ミスの被害者が、「裁判は好んでやっているわけではなく、裁判でなければ真実を知ることができないからだ」「被害者の心情をまったく分かっていない」と述べたことを報じていた。
被害者の人のいうとおりである。
その点はともかく、前提として、「医療をネタに稼げる」という認識は誤りである。
弁護士にとって、患者側に立つ医療過誤訴訟というのはしんどい仕事である。
その理由を箇条書きしてみると
患者側には、どのような治療がされたのかさえ不明であり、有利な証拠がないのが通常であり、もともと不利な戦いを強いられる。
患者はもちろん弁護士の医学知識も、医療側に比べると十分でない。
専門知識について医師に頼ろうとしても、協力してくれる医師はそれほどいない。 ましてや、患者側の立場で証人尋問に出て証言してくれる医師は少ない。
医療過誤訴訟ではほとんどの場合、長期化するため、弁護士にとっても負担は大きい(患者の負担が大きいのはもちろんである)。
勝訴しても、アメリカのような懲罰的損害賠償は認められないため、賠償額はそれほど高額にならない。 したがって、弁護士費用も高額な請求はできない。
患者の方は、ナーバスになっているため、弁護士と信頼関係が崩れることもあり得る。
このような様々な問題から、積極的に医療過誤訴訟をしようという弁護士は、日本では少ないのである。
医療過誤というのは実際は相当ある。
私の友人で大学病院に勤務している複数の医師が言っていたから間違いない。
したがって、弁護士が増えると、その医療過誤が掘り起こされて訴訟が増えることはいえるかもしれない。
しかし、それで弁護士が稼げるかというと、上記の理由から、そのようにはならないであろう。
厚生副大臣の発言は、患者をバカにしているという意味で問題であるが、医療過誤訴訟で稼ぐことができるという間違った認識している点でも問題である。
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