今日の日経を題材に法律問題をコメント

2003年07月24日(木) 盗難通帳の払戻で銀行の過失責任を認める

 日経(H15.7.24)社会面に、盗難通帳で払い戻しをされた被害者が、銀行に対し訴えていた裁判で、東京高裁は銀行の過失を認めたと報じていた。

 この裁判では第一審では銀行の過失がないと判断しているから、逆転判決である。


 銀行は、これまでは印影が少々へんだと思っても、トラブルを恐れて、そのまま払い戻しをしていた傾向がある。

 しかし、それでは印鑑照合する意味がないだろう。



 盗難された通帳による払戻は非常に多く、被害額は1000万円以上になることもある。


 それに伴い、払い戻しをした銀行に過失があるとして、被害者が銀行に対して訴訟をするケースが急増している。



 裁判所は当初は銀行の過失をほとんど認めなかった。

 数年前に知り合いの弁護士から聞いた話であるが、どう見ても払戻票の印影と、通帳の印影とが違うのに、裁判所は銀行の過失をまったく認めなかったそうである。


 裁判所は、「金融システムの円滑な運用」を重視する傾向があり、銀行の注意義務を加重すると、「金融システムの円滑な運用」の障害になると考えている節がある。



 しかし、最近はあまりの訴訟の多さに、風向きが変わった気がする。


 新聞記事によると、裁判所は印影を詳細に比較して、「押し方や朱肉の付具合などでは説明できない違いがある」と認定している。


 このように、印影を詳細に比較するという手法自体、払い戻しの際にも詳細な印影の照合を要求する結果になり、銀行に相当の注意義務を課すことになるだろう。



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