2003年10月21日(火) |
キャノン元社員が発明の対価として10億円の請求 |
日経(H15.10.21付)社会面で、キャノンの元社員が発明の対価として10億円の支払を求める訴えをしたと報じていた。
記事によれば、この人はレーザービームプリンタで用いられる技術に関する発明を行い、その結果、キャノンは458億円の利益をあげたのに、85万円しか報酬を得ていないそうである。
この人の発明した技術は、レーザービームプリンタにとって不可欠な技術のようである。
それゆえ、85万円の報酬というのは少ない気がする。
しかし、その他の技術もなければ製品は完成しないわけである。
すなわち、その人の発明した技術が売上にどの程度寄与したのかは明確でなく、そのため、職務発明の対価としてどの程度の金額が相当かもよく分からない。
裁判官もよく分からないと思う。
日立製作所を相手にした訴訟では、9億7000万円の請求に対し、職務発明の対価として約3500万円が認められた。
どのように素晴らしい発明であったとしても、数億円もの報酬を認めるのは日本の常識からいえば多すぎる気がする。
ところが、3000万円程度であればそれほど常識はずれでもないし、日立であれば払えるだろうとも思う。
裁判官は、腹の中ではそのような大雑把な発想しかしてないと思う。
そして、それなりの根拠を示して裁判官の思っている数字に近い金額を示すことができれば、裁判官は納得し、それに近い金額の判決をすることになるのである。
(一応、売上高、独占的地位に起因する割合、実施料率、貢献度などを考慮する と言われているが、貢献度の算定は困難である)
だからといって裁判官がいい加減であるわけではない。
「相当な対価」といっても、そのような形でしか判断できないということを言いたいのである。
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